鍼灸遡洄集(しんきゅうそかいしゅう 1695年刊)から
原文の一部の書き下し文を作りました。
(修正することあり)

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鍼灸遡洄集 巻の上
診腹(しんぶく)の総論

腹を診(うかが)うの法は、
心(ここを)を正し、容貌を端整し、手法を舒緩にし、
安静にしてもっとも粗厲(それい)を忌む。
(時気・寒涼・炉火を請(こ)い、あるいはこれを懐(ふところ)にし、
まず自己の膚(はだ)へを試む。)
しこうしてのちに、患人(かんにん)をして
仰(あお)むけに臥(ふ)せしめて、
手を安らかに足を伸べ、帯を解き、しばらくその呼吸(こきゅう)を候(うかが)う。
しこうしてのち、まず胸上(きょうじょう)を摩(さす)り撫(な)で、
もって腹臍に至ってその周囲を診(うかが)い、
および高下(こうか)平直に胸上に至って、
腠理(そうり)の潤枯(じゅんこ)、
皮膚の堅脆(けんぎ)、虚里(きょり)の動を察し、
もって心肺の病を知り、
宗気の虚実、三脘(さんかん)脾胃の部、両脇下、肝の候(うかが)い、
および臍間元気の繋(かか)る所、十二経脈の根本に至って、
有余の者は、腫(しゅ)を為し、痛みを為す。実という。
不足の者は痒(よう)を為し麻(ま)を為す。虚という。
気の速やかなるは、効(こう)速やかなり。
気、遅ければ、効遅し。

死生(しせい)、貴賤(きせん)、針下(しんか)皆知る。
賤者は硬し、貴者は脆(もろ)し。
生者は渋る。死者は虚す。
これを候(うかご)うて至らず、必ず死すこと疑いなし。
医の専(もっぱ)らとすべき第一なり。

然(しか)れども、近代、利口(りこう)の士(し)は
意心伝授(いしんでんじゅ)の法と謂うて、
深くこの義(ぎ)を蔵(かく)す。
蒙昧(もうまい)の士はこの義あることを知らず。
素霊難経(それいなんぎょう)、散在の文、
詳(つまび)らかに後(しりえ)に録(しる)し、
参考に備(そな)うのみ。
然(しか)りといえども手をもって、
考え知るべきに於(お)いては、
なお大切の口伝(くでん)有り。
妄(みだ)りに記(しる)すべからず。

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