傷寒論攷注

「案ずるに前條云う所の悪寒已めども、「発熱汗出」然れども猶戸隙の風、傍人起居衣袖の扇風を悪、其脈必ず浮緩、此の証元来表気疏泄有り、故に邪の発散は表実証于速い、然れども表陽の虚は胃腸の虚に係がる、故に表実の一汗にして解するに比べれば、則ち其癒は却って遅く…」

 

この文から色々発展して思考できそうです。

ここは中風について述べている文で、表陽の虚がなぜ胃腸の虚に繋がるのか。

ここの繋がりはなんなのか。

調べていきます。

 

傷寒論攷注

「案ずるに「中風」の一証、其人素衛気疏泄して堅からず、或いは労力奔走等の事有り、陽気を擾動かし、表をして開泄せしめて、其虚隙に乗じる也…」

 

これは霊枢の下の文に繋がると思います。

 

『現代語訳 黄帝内経霊枢』 営衛生会篇 P 340、341

「黄帝がいう。人が熱い飲食物を食べて、これが胃中で未だ精微物質に消化されていないのに、食べるとすぐに発汗する。汗は顔面から出ることもあり、背中から出ることもあり、半身だけ出ることもある。この様に衛気が通常の通路を通らないで、汗となって出るのは何故か。」

岐伯が答える。

「それは、外表に風邪の侵襲を受けて、腠理が開き、毛孔は緩んで、衛気が体表に向かって走り、正気の通路を通ることができないからです。

これは衛気の本性が慓悍ですばやく、どこかに弛緩して開いている部位があれば、そこから出ていこうとするためです。」

 

とりあえず汗に関しては風邪に襲われて腠理が開き、衛気がそこから出ていくから。

 

『現代語訳 黄帝内経素問』 五臓別論篇 P212

黄帝がいう。

「気口の脈を単独で診察するだけで、五臓の変化を知ることができるのはなぜであろうか。」

岐伯がいう。

胃は水穀の海であり、六腑の源泉となっています。

飲食物は口から胃に入り、全て胃に貯留し、脾による輸化の働きによって五臓の気を滋養しています。

気口もまた太陰経であり、さまざまな脈に朝見することを主ります。

こうしたわけで、五臓六腑の気と味は、いずれも胃に源をもって気口に反映するのです。」

 

肺経が脾胃の気を受けている事が分かります。

手太陰肺経の始まりである中府の名前も

「中焦の気が集まるところ」

である事から納得できます。

 

また、脈診で寸口を取るのは、八会穴の脈会である太淵あたりが良く反映されるからではないかと思いました。

 

最初の傷寒論攷注の文の

「表陽の虚は胃腸の虚に係がる」

とはこういう事なのかなと思いました。

 

『中医臨床のための方剤学』 P 29

桂枝湯「生姜・大棗の配合は、脾胃を昇発し営衛を補充し振奮させる。」

とあり、桂枝湯に脾胃の薬が配合されている意味にも繋がると思いました。

 

参考資料

『現代語訳 黄帝内経霊枢』 東洋学術出版社 南京中医薬大学編著

『現代語訳 黄帝内経素問』 東洋学術出版社 南京中医学院編

『中医臨床のための方剤学』 東洋学術出版社 神戸中医学研究会編著

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