津液とは、生体における正常な状態の水分(=水液)を指す名称。
飲食物から作られる「水穀の精微」のうち、脾で気化された水液の部分が津液となる。
また、それ以外にも大腸が便を形成する際に余った水分が脾に戻され、それも津液として再利用される。
津液の分類
津液は、その機能・分布・性質により「津」と「液」に分けられる。
● 津(しん)
清く、希薄
流動性に優れる
血液の成分にもなる
目・口・鼻・皮膚などに分布
● 液(えき)
濁っていて、粘り気がある
流動性は低く、限られた部位に存在
骨・関節・脳・髄などに分布
中医学では、「津」を含めたこれらを「陰津」と呼び、重要な生理物質として重視する。一方で、「陰液」という言葉は、漢方医学で用いられる用語であるようだ。
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『漢方概論』(矢数道明, 創元社, 1981年)p.45
「陰液とは津液のうち陰性のもので、血と共に陰を構成し、身体を滋養する。」
『黄帝内経・素問』五臓生成篇
「陰津者、精気也。」
人体の水液代謝に異常が起こると、津液は以下のように変化する。
津液 → 湿 → 水 → 飲→ 痰
このように、粘稠性や固体性が増すことで、正常な津液とは異なる病理的産物へと変化する。
中医学では津液の「液」も、この病的状態を含む概念として使われることがある。
津液と関係の深い臓腑
● 脾(運化・昇清)
水穀の精微から水液を取り出し、津液を作る。
作られた津液は全身へ運ばれる(=運化作用)。
まず肺に送り上げることで、シャワーのように上から全身へ散布しやすくなる(=昇清作用)。
● 肺(宣発・粛降)
位置の高さを利用し、津液を全身に行き渡らせる(=宣発作用)。
また、全身を滋養した後の廃液(=濁)を膀胱に送り出す(=粛降作用)。
これらの働きにより、水の通り道に滞りがないように調節する。
● 腎(主水・開闔)
「腎は水を主る」とされる。
膀胱に送られた「濁」から、有用な「清」を蒸騰させて肺に戻し、不要なものは尿として排出。
膀胱の開閉(尿の排出)も腎が管理している。
まとめ
- 津液は、飲食から得られる水穀の精微などから生成される、体に必要な水分。
- 津と液に分けられ、それぞれ分布と性質が異なる。
- 脾・肺・腎の協調した働きによって、全身に適切に津液が配分・排出される。
- 水分代謝が乱れると、病的な「湿・痰」などへと変化していく。
<参考文献>
神戸中医学研究会(1995)『基礎中医学』株式会社燎原
関口善太(1993)『やさしい中医学入門』東洋学術出版
高金亮(2006)『中医学基本用語辞典』東洋学術出版