こんにちは。
寺子屋生の水上です。今回は虚実についてです。
おしゃべりのスピードが早く、声の大きい人は実
ゆっくりで声の小さい人は虚
国試練習問題を解く際のヒントとして学んだキーワードである。
しかし、臨床の場では必ずしもそうとは限らない。
まず第一に、虚実とはなにか。
字面からすると、なにか身体もしくは臓器のはたらきが不足、あるいは有余している状態という印象を受ける。しかし「新版 東洋医学概論」(2015)には以下のように記載されている
「虚は身体にとって必要な精気(正気)の不足、機能の低下を示し、実は邪気が旺盛である状態、あるいは生理物質などが停滞した状態(中略)を示している。」
つまり虚実とは、臓器の働きが不足したり旺盛なことを示すのではない。
正気の弱りと邪の侵入を、虚実と示すのである。
邪とはウイルスのほか、六淫(風・寒・暑・湿・燥・火)が該当する。
今週はその点について多くを学んだので、当院の先生方による印象に残った話を記録する。
院長談
正気がしっかりしていれば邪が入っても恒常性により取り去ることができる。しかし正気が弱るあるいは邪の力が強いと侵襲を受けてしまう。
下野談
「肝実」という概念は用いない。肝はアクセルの働きをもつ臓腑であり、それがオーバーヒートしている状態は実ではなく、「肝陰の虚」と考える。
一方で「胃家実」という語句は例外として使われ、過食を意味する。
肝実、という概念は使用しないが、肝の働きの異常により生じた気滞や瘀血は邪、すなわち実とみなすことができる。
用語の基礎をきちんと学び、価値観を臨床にすり合わせていくことの難しさを痛感した。
参考文献
教科書検討小委員会『新版 東洋医学概論』(2015) 株式会社 医道の日本社