こんにちは、大原です。
前回まで、『切脈一葦』の序文を
2回に分けて読んでいきました。
前回の記事 (切脈一葦 序文2)
今回から、上巻を読んでいきます。
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切脈一葦 巻の上
常陽 中茎謙 著
脈位
寸口の脈は、顕然として見(あらわ)る処なり。
故に上古より今に至る迄、
動脈の流行をここに診して。
血気の盛衰をうかがうこと何の時より始めと云うことを。
明らかにせずといえども、古書に脈を論ずるときは、
必ず寸口を主とするを以て考えるときは
上古の脈位なるこを疑いなし。
寸尺は、人の体より出(いで)たる者にて、説文に、
「周制の寸尺(すんしゃく)咫(し)尋常の諸度量は、皆人体をもって法と為す」と。
の語あり。
家語に、
「指を布(し)き寸を知る。
手を布(し)き尺を知る。
肘を舒(の)ばし尋(ひろ)を知る、の語あり」。
素問に、
「尺内の両傍はすなわち季肋なり」の語あり。
また、寸尺按じるの語あり。
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霊枢に、「尺を調う」の語あり。
これらの語を合わせて考えるときは、人の体を指して尺と称すること、見るべし。
尺は度量の統名なるをもってなり。
調尺の尺は広く人身を指し、
尺内の尺は腹を指す。なお腹内というが如し。
尺寸の尺は手を指す。
寸に対するをもってなり。
寸口は尺を診するところなるをもって名づけ、
尺沢は尺より寸に、血脈の流行する処をもって名づけたる者なり。
動脈の見る処多しといえども、
その著名なる者は、寸口を第一とす。
人迎趺陽は、これに次ぐ者なり。
人迎は常に寸口より大く、
趺陽は、常に寸口より小なる者は、脈道に本末あるをもってなり。
これ仲景氏の寸口人迎趺陽をもって三部と為すといえども
その大ならず。
小ならざる所の寸口を主として、人迎趺陽を参考に備えるゆえんなり。
虛里少陰膻中も、また其の著名なる者なり。
故にその証によって、参考に備えることあり。
寸口は手の掌の後、高骨の側に見る動脈なり。
人迎は、結喉の両傍に見る動脈なり。
結喉は喉嚨なり。頤(あご)の下に高く尖りたる骨をいう。
趺陽は趺の上に見る動脈なり。足の跗の上、大指と次指との両骨の間を上へ去ること五寸、
動脈手に応ずる所なり。
虛里は左の乳下に見る動脈なり。
少陰は足の内踝の後ろ、陥なる中に見る動脈にして、
いわゆる少陰の道、是なり。
臍中はいわゆる腎間の動、是なり。
(続く)
参考文献
『切脈一葦』(京都大学附属図書館所蔵)
画像は京都大学デジタルアーカイブより