中医における気虚の基本方剤といえば四君子湯になるだろう。
補益剤においては脾の運化に注意する。
長期間服用する場合、脾胃の運化を高める事で薬物を吸収し利用しやすくなるためである。
また脾胃を高める事で普段の飲食物の吸収率も高まり、胃の気や正気の充足に通じる要素もあるだろうと思われる。
四君子湯《出典:太平恵民和局方剤・治一切気》
治営衛気虚、蔵府怯弱、心腹脹満、全不思食、腸鳴泄瀉、呕噦吐逆、大宜
人参(去芦) 甘草(炙) 茯苓(去皮) 白朮(各等分)
上為細末、每服二錢水一盏、煎至七分、通口服、不拘時、入塩少許,白湯点亦得。
常服温和脾胃、進益飲食,辟寒邪瘴雾气。
効能:益気健脾(全体として脾の運化を高める)
方意:人参は胃の気を高める君薬である。
白朮は健脾することで湿邪をさばき、
茯苓は水湿をさばくことで健脾作用を引き起こす。
また人参と甘草には保津作用がある。
保津とは補気することで二次的に津液を生じるのであり
地黄や当帰など直接的に陰分を補うものとは作用を異にする。
これは古典に
「よく陽を補う者は陰中に陽を求め、よく陰を補う者は陽中に陰を求める」
と言われるように補陽剤に滋陰薬を入れると
陽薬の燥化を防ぎ補気剤の温煦を滑らかに行う技術の一つである。
たった四味から成る四君子湯ですが
補気剤の基本ということを考えれば
脾胃を中心に据えていることや
(陽剤でありながら、陰薬の要素を含ませることで)
傷津に対する配慮がなされていること
など学ぶものは少なくない。
また診断に関しては気血不足による純粋な痩舌よりも
湿邪を連想させる胖大舌が主な所見になっていることから
如何に脾胃が虚すと内湿が生じやすいかよく分かる
というものである。
また本方はもともと経験方であり
原文にも長期服用するもの(常服)とあるので
当時、治療の中で補助的に
用いられていたように思われるが推察の域を出ない。
参考文献
『中医臨床のための方剤学』医歯薬出版