ホーム Blog ページ 6

Blog

東洋医学・鍼灸医学の研究用ブログです。

五行大義(1)

第二辨體性 體者以形質爲名。性者以功用爲義。以五行體性資益萬物。故合而辨之。 木居少陽之位、春氣和、煦温柔弱。火伏其中。故木以溫柔爲體、曲直爲性。 火居大陽之位、炎熾赫烈。故火以明熱爲體炎上爲性。 土在四時之中、處季夏之末。陽衰陰長。居位之中、總於四行、積塵成實。 積則有間。有間故含容。成實故能持。故土以含散持實爲體、稼穡爲性。 金居少陽之位。西方成物之所。物成則凝强。少陽則淸冷。故金以强冷爲體、従革爲性。 水以寒虛爲體。潤下爲性。 洪範云、木曰曲直、火曰炎上、土曰稼穡、金曰従革、水曰潤下。是其性也。 淮南子云、天地之襲精爲陰陽。陰陽之専精爲四時、四時之散精爲萬物。 積陰之寒氣、反者爲水、積陽之熱氣、反者爲火。 水雖陰物、陽在其内。故水體内明。 火雖陽物、陰在其内。故火體内暗。 木爲少陽、其體亦含陰氣。故空虛、外有花葉。敷榮可觀。 金爲少陰、其體剛利、殺性在外、内亦光明可照。 土苞四德。故其體能兼虛實。 体は形式を以て名となす。性は、功用を以て義となす。 五行の体性を以て、万物を資益す。故に合してこれを弁ず。 木は少陽の位に居り、春氣和し、煦温にして柔弱なり。 火その中に伏す。故に木は、温柔を以て体となし、曲直を性となす。 火は大陽の位に居り、炎熾にして赫烈なり。 故に火は、明熱を以て体となし、炎上を性となす。 土は四時の中に在り、季夏の末に処り、陽衰へ陰長ず。 位の中に在り、四行を総じ、塵を積みて実を成す。積れば則ち間あり。 間あり、故に容を含む。実を成す、故に能く持す。 故に土は、含散・持実を以て体となすし、稼穡を性となす。 金は、少陽の位に居る。四方は物を成すのところ。物成れば、則ち凝強す。 少陽は則ち清冷なり。故に金は、強冷を以て体となし、従革を性となす。 水は、寒虚を以て体となし、潤下を性となす。 洪範に云う、木に曲直といい、火に炎上といい、土に稼穡といい、 金に従革といい、水に潤下というと。これその性なり。 淮南子に云う、天地の襲精は陰陽となり、陰陽の専精は四時となり、四時の散精は万物となる。 積陰の寒気、反する者を水となし、積陽の熱気、反する者を火となす。 水は陰物と雖も、陽その内に在り。故に水の体は内明らかなり。 火は陽物と雖も、陰その内に在り。故に火の体は内暗し。 木は、少陽たり。その体、また陰気を含む。故に内空虚にして、外花葉あり。敷栄して観るべし。 金は少陽たり。その体剛利にして、殺生外に在り、内また光明ありて照すべし。 【参考文献】 『五行大義』明德出版社

方剤学(1)

八法 『医学心悟』(程鍾齢)には「病の源を論ずれば、内傷外感の四字によりこれを括る。病の情を論ずれば、すなわち寒熱虚実表裏陰陽の八字をもってこれを統べる。しかして治病の方は、すなわちまた汗・和・下・消・吐・清・温・補の八法をもってこれを尽くす」とある。  温法   温法とは、温裏・散寒・回陽・通路などの効能により、寒邪を除き陽気を回復し経路を通じて、裏寒を解消する治法である。裏寒の成因には外感と内傷の別があり、外来の寒邪が裏に直中するか、陽気不足や誤治による陽気の損傷によって陰寒が内生する。このほか、裏寒には臓腑経絡という部位の違いがある。それゆえ、温法にも温中散寒・回腸救逆・温経散寒の別がある。 ○温中散寒剤 中焦虚寒や中焦の裏寒に適用する。 脾胃の陽気が虚衰して、運化と昇陽が不足し、腹痛・腹満・食欲不振・口渇がない・下痢・悪心・嘔吐・舌苔が白滑・脈が沈細、沈遅などの症候がみられる。このほか外寒が中焦に直中して裏寒が生じることもあり、素体が陽気不足の場合に発症することが多い。 (01)理中丸《傷寒論》 (02)呉茱萸湯《傷寒論》 (03)小建中湯《傷寒論》 (04)大建中湯《金匱要略》 ○回腸救逆剤 心腎の陽気衰弱による内外倶寒の陰寒証に適用し、陰寒内盛によって生じる陰盛格陽・戴陽などの真寒仮熱にも用いる。 陽気衰微の内外倶寒では、元気がない・四肢厥冷・畏寒・身体を縮めて寝る・不消化下痢・舌質が淡・脉が沈細、沈で無力などがみられる。悪化し、陽気が格拒されると、体表部の熱感・煩躁など格陽の症状や口渇・煩部紅潮など戴陽の症候があらわれ危急状態となる。 (01)四逆湯《傷寒論》 (02)参附湯《正体類要》 (03)回陽救急湯《傷寒六書》 (04)黒錫丹《和剤局方》 ○温経散寒剤 陽気の不足や陰血不足で経脉に寒邪を受け、血の運行が阻滞された状態に用いる。 手足の抹消の冷えや肢体のしびれ痛み・脉が沈細などの症候がある。 (01)当帰四逆湯《傷寒論》   大建中湯(温中散寒剤) 〔主治〕 中焦陽虚・陰寒上逆 〔組成〕 蜀椒・乾姜・人参・膠飴 〔方意〕 急いで温中補虚・散寒降逆して止痛・止嘔する。 主薬は辛・大熱の蜀椒で、脾胃を温め散寒除湿・下気散結に働く。 大辛・大熱の乾姜は、温中散寒して中陽を振奮し、逆気を散じて止痛・止嘔する。 甘温補中の人参・膠飴は脾胃を補益して本治し、膠飴は緩急にも働く。 辛甘の薬物のみで中陽を温建し、補虚散寒の力は小建中湯より峻烈であるので「大建中湯」と名付けられる。   後天の本 脾と胃とはともに中焦にあり、脾は陰であり、胃は陽であるので、両者は表裏の関係にある。 胃は受納を担当し、脾は運化を担当し、互いに協力しあっている。 そのため、どちらかに病変が発生したときには、もう一方に害が及んでしまう。 したがって実際に脾胃の病変が起きた時には、水穀の受納・運化・配布機能の全てに渡って影響が現れる。 脾胃は気血を化生し、五臓六腑と体内外を潤して肌肉を満たし、四肢を壮健にするので、後天の本といわれる。 【参考文献】 『中医臨床のための方剤学』医歯薬出版株式会社 『中医病因病機学』東洋学術出版社

客氣の”客”

景岳全書 伝忠録 夏月伏陰續論 『主氣と異なるものとして、客氣がある。天は五氣を周らし、地は六氣を備えている。・・ ・・この客氣は冬であろうと夏であろうと、その季節とは異なる氣を引き起こして、人々を病気にさせる氣である。・・』 『夏期になると陰気は伏して内にある。これは本来、天地の間における陰陽消長の理である。・・』 の冒頭から始まるこの篇ですが、 朱丹溪との陰陽の考え方の違いを解説し、張景岳の持論を展開している章になります。 この章を咀嚼した内容は別の機会に上げさせて頂くとして、 ときおり出てくる”客”が気になりましたので、調べてみる事としました。 【客氣(かくき)】 1⃣一時のから元気。血氣の勇。假(仮)勇。 2⃣其の歳の運を動かす外部から來る運気。主気に對(対)していふ。 客 ①よせる。よる。身を寄せる。 ②まらうど(客人)。主の對。 ③上客。一座の尊敬する人。 ④かかり人。 ⑤外來人。 ⑥あひて。 ⑦たびびと。 ⑧たび。 ⑨居處(いどころ)の定まらない者。 ⑩人。士。 ⑪とくい。得意。顧客。 ⑫來しかた(過ぎ去った時)。過去 ⑬姓。 この夏月伏陰續論の客氣に関していえば、主たる氣とは別の 「病をもたらす得体の知れない氣」といったところでしょうか。 景岳全書の後の章、「命門余義」の中には 『・・三焦の客熱として邪火がある場合も火が原因となっているのであり、・・』 とあります。この客熱もまた、主体の火化とは異質の火に感じられます。 經穴では、 小陽胆経の經穴で上関穴を別名:客主人といいますが、この場合は 「頬骨弓を挟んだ、下関穴の相手方」という意味として、鍼灸学校で教えて頂きました。 その意味合いだけなのかどうか、今後の新たな発見を目指したいと思います。 【参考文献】 『大漢和辞典』大修館書店 『新版 経絡経穴概論』医道の日本社 『現代語訳 景岳全書 伝忠録』たにぐち書店

病因について(2)

ようやく、一年生も終わりに近づいてきました。 この冬は、解剖学・生理学・栄養学で共通する機能を 多方面より勉強する時間を過ごしていました。 解剖学では腎臓そのものの構造。 生理学(動物)では蓄尿・排尿のメカニズム。 生理学(植物)では腎蔵に関係する内分泌(バゾプレッシン・アルデステロン)。 栄養学では高血圧とそれに対応する栄養素(塩分を控える)。 腎機能のフルコースでした。 東洋医学の病因について~ 【外因】 ・六淫(風、寒、暑、湿、燥、火) ・疫癘 人体が影響を受ける要素の一つについて黄帝内経の一節に出会いました。 特に外因と関係深い、地域の特徴や風俗習慣について。 『素問』異法方宜論篇 第十二 黄帝問曰.醫之治病也.一病而治各不同.皆愈何也. 岐伯對曰.地勢使然也. 故東方之域.天地之所始生也.魚鹽之地.海濱傍水.其民食魚而嗜鹹.皆安其處.美其食. 魚者使人熱中.鹽者勝血.故其民皆黒色疏理.其病皆爲癰瘍.其治宜砭石.故砭石者.亦從東方來. 黄帝問いて曰く、 医の病を治するや、一病にして治 各々同じからざるに、皆癒ゆるは何ぞや? 岐伯答えて曰く、 地勢の然らしむるなり。 故に東方の域、天地の始めて生ずる所なり。魚塩の地、海浜にして水に傍う。 魚を食して鹹を噛む。皆其の処に安じ、其の食を美とす。 魚なる者は人をして熱中たらしめ、塩なる者は血に勝つ、故に其の民 皆黒色にして疏理なり。 其の病 皆癰瘍となる。其の治 砭石に宜し。故に砭石なる者は、亦た東方より来る。 また腎?かと・・ 【五行】 ・五味  酸、苦、甘 、辛、鹹 ・五蔵  肝、心、脾 、肺、腎 ・五時  春、夏、長夏、秋、冬 冬だから腎を勉強しろ。という事だったのでしょうか??(笑) 参考文献 『中医病因病機学』東洋学術出版社 『現代語訳 黄帝内経素問』東洋学術出版社 『新版 東洋医学概論』医道の日本社 稲垣英伸

張景岳曰、

明清時代、痰に関する研究は日増しに整備されていった。 張景岳は「痰には虚と実とがあり、・・・最良の治療は、痰を発生させない事である。これが天を補うということである。」 と述べている。(『中医病因病機学』第20章 痰飲病機) 気になりましたので備忘録として置いておきたいと思います。 先生方で『景岳全書』を購入するなら、”この出版社がおススメ”などあればご教授頂ければありがたく思います。 【参考文献】 『中医病因病機学』東洋学術出版社

脾胃が弱くなる

食べる量が充分ではない状態が続くことによって 脾胃が弱くなる、とは?(→水穀が入ってきても生気が精製されなくなる) =虚弱になる?ということ? =病気になる?→昇降異常? =機能が弱くなる? 脾胃の機能の主なもの:「納運(受納機能/運化機能)」 運化:飲食物を消化し吸収する過程であり胃と小腸が関わる。 失調すると消化吸収が阻害され食欲不振になる。 受納:水穀を受け入れる場所。水穀を腐熟させ水穀の精微へと変化させる。 胃は水穀で満たされることから水穀の海と呼ばれる。 胃が受納できる⇒食欲がある、ということ。 教科書ではそれぞればらばらに習っていることも、実際には 同じ身体の中で起こっていることであって機能が対立し、融合し合っている、のは 脾胃だけでなく他の臓腑もそうなのかもしれないな、と思いました。 臓腑の生理や機能についてあやふやになっていることが沢山あると感じたので しっかりと復習することにします。

始めまして、のご挨拶。

徒然なるままに、日暮らし、キーボードに向かいて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。 …… 始めまして。 某所にて、鍼灸学校での2年生をさせていただいております、仁と申します。 この度、ご縁があり、一鍼堂さまの東洋医学研究所で学生Blogを書かせていただくこととなりました。年齢は三十路半ば過ぎ、独身男性とだけ…… 私は2005年、メンタルや睡眠の不調をきっかけに鍼灸に出会い、それから寛解やぶり返しを繰り返しつつ、徐々に良くなってきていき、定期メンテナンスの意味も込めて、鍼灸の患者を13年ほどやってます。 また、その間、色々な鍼灸院を渡り歩き、一般患者向けの東洋医学の勉強会にも参加させていただいたことがあります。 なので、私の心身の中において、東洋医学については、偏った思想・知ったかぶりの姿勢が根深く存在します。 ひょんなことから、東洋医学をやる鍼灸師となろうと決意したものの、その偏った「どうしょうもない、もう一人の自分」と格闘している真っ最中です。 東洋医学の鍼灸医術は、他の医療職とは違うベクトルの勉強方法……中国を始めとした他国の文献(をベースにした日本製の教科書)をチェックし、それだけでなく、自分の感性、五感を研ぎ澄ます訓練・稽古を、心身にインストールしつづけなければなりません。 …… 要は、「ショッカーに誘拐されて、現在進行形で改造手術を受けさせられてる、昭和の仮面ライダー」の【候補生】といったところでしょうか。 ※適切な例えかどうかはさておき…… その【候補生】が、 ★「イーッ!」と叫んで騒ぐだけの「単なる戦闘員」という名の【モブキャラ】で終わるのか。 ★毎週、仮面ライダーに殺られる、気持ち悪いデザインの「怪人」という名の【当て馬】で終わるのか。 それとも………… ★「そこ」から逃げて、普通の人間には戻れない悲壮感を持ちながらも、腹を括って覚悟を決めて、【仮面ライダー】として生きていくのか。 正直、自分自身、全く自信がありません。 でも、乗りかかった船です。やれるだけやってみます。 …… 現在は、一鍼堂さまにおける、林院長の治療や先生方の勉強会や、各種鍼灸勉強会に参加させていただきつつ、また、学校で学んだことを活かし、試行錯誤・悪戦苦闘しながら、自分自身や家族・親族の病気・不調・不定愁訴を治療をしています。 ※人体実験…… それらの経験を生かして、中間目標としては、猛烈に高難易度になった、2020年度のはり師・きゅう師の国家試験の合格と、 それを通過点とし、さらには、2025年までには社会福祉士や精神保健福祉士も取得したいなと考えております。 (社会福祉士は2017年1月の国試で2点たりず、不合格……いつかはリベンジしたい。) また、将来的には、 ・自閉症スペクトラム障害や発達障害、精神疾患や睡眠障害などの、いわゆる「気の病」に強い鍼灸師になれないか? ・鍼灸・福祉・合気道を三位一体で組み合わせた、統合療育院ができないか? との漠然としたコンセプトと方向性を持ちながら、日々、基礎研究に励む毎日です。 ………… Blog記事のポリシーは、「Keep it rockin'!!」でいきます。 ですが、くれぐれも、「深夜に書いたラブレター」な記事を乱発する口先だけ人間にならないように、林先生はじめ、一鍼堂の先生方、諸先輩方、また読者の皆々様からのご指導ご鞭撻のほど、切によろしくお願いします。

痰飲(02)

脾虚湿盛 脾陽不足の為に運化機能が働くなった為に、水湿が停滞する病気変化。 食生活の不摂生や冷たいものばかりを飲む、寒湿を感受する、雨に濡れる、 湿潤な土地に長く住むなどすれば、寒湿の邪が表から理に入り込むので、脾陽不足となる。 【病理】 1、寒湿困脾 寒湿を外感したり、食生活の不摂生、生ものや冷たいものを好んで食べたりすれば脾陽を痛める。 運化機能が失調し寒湿の停滞により寒湿困脾という病理が起きる。 2、寒陰内停 寒湿の邪が脾を傷り、陽気を損傷するために湿が集まって陰となり中焦に停滞する。 3、湿聚生痰 湿が集まり痰になれば、様々な疾患を誘発する原因となる。 4、脾虚水泛 脾が虚して湿を制御することが出来ないという病理。 湿濁が中焦に塞がって痰飲となるが、悪化すれば蓄積した水湿が皮膚に溢れ浮腫となる。 漢方薬 【和解剤】 ・当帰芍薬散(金匱要略) 効能:補血調肝、運脾除湿 主治:肝氣乗脾(肝血虚、脾虚湿滞) 【補益剤】 ・参苓白朮散(和剤局方) 効能:益氣健脾、慈補脾陰、渗湿止瀉 主治:脾氣陰両虚、脾虚湿盛   瀕湖脉学四言訣 滑脉と渋脉の主病 滑脉主痰、或傷於食。 下為畜血、上為吐逆。 渋脉少血、或中寒湿。 反胃結腸、自汗厥逆。 滑脉は痰をつかさどり、あるいは食において破る。 下りて畜血をなし、上がりて吐逆をなす。 渋脉は少血なり、あるいは寒湿にあたる。 胃に反し便秘をなし、自汗し胸腹激痛に両足冷え苦しく食事もできない。   【参考文献】 『中医病因病機学』東洋学術出版社 『中医臨床のための 方剤学』医歯薬出版株式会社 『中医脉学と瀕湖脉学』たにぐち書店
切脈一葦

切脈一葦 序文1

こんにちは、大原です。 『切脈一葦(せつみゃくいちい)』という書物を読んでいきます。 今回は、一番はじめの序文からになります。 原文には二つのカナ文字が一つに合わさった 「合略仮名」という文字があるので、 慣れない内は読みにくいかも知れません。 <読み方>(以下の読み方は、原文をもとにした拙者の解釈によります。(後述)) 切脈一葦 序 脈は実事にして、脈色声形四診の一つなり。 その状、弁しやすからずといえども、指下に心を留めて診するときは、 その掌を指すが如し。 ただその弁じ難き者は、 脈状を全証に参考して邪気の緩急と精気の虚実とを弁ずるにあるのみ。 その法素問霊枢及び扁鵲仲景二氏の書に備わるといえども、 皆分配家のために真面目を失する所多し。 故に活眼を開いてこれを観るにあらざれば、 その真面目を観ることあたわざるなり。 晋の王叔和、これを弁ずることあたわず。 ただ分配家の説を論じて、脈経を著わす。 その書詳なりといえども、ただ文字を論じて脈を論ぜず。 その言に曰く、脈理精微にして、その体は弁じ難く、弦緊浮芤、展転相類す。 心に在りて了し易く、指下明らかにし難し。 沈を謂いて伏と為し、則ち方治永くそむき、緩を以て遅と為すごときは、 則ち危殆(きたい)立ちどころに至ると。 この説出てより以来、脈を診する者、脈状を明むることあたわず。 その弊遂に脈状は明じ難き大業と為すに至る。 これ医門の大厄なり。 それ道は大路のごとくにて、知り易く行なえ易し。 いわんや脈は、実事にして顕然(けんぜん)たる者、 何ぞ指を以て明じ難きの理あらんや。 ただ心に在りて了し難きのみなり。 弦緊浮芤は相類すといえども、 重き脈は、その状分明にして、診し易く、 ただ軽き脈のみ相類して、分明ならさる者あり。 然れども、分明ならざる者は、固(もと)より相類する者にして、 その証異ならざれば、通し用いゆといえども害あることなし。 伏は沈の極みなり。 遅は緩の極みなり。 故に弦緊浮芤の分明ならざる者は、 その証に因りて、沈を伏とし、緩を遅と為すといえども、 また害あることなし。 これ指を以て明にし難きにあらざる所以(ゆえん)なり。 たとえ沈伏緩遅たがわずといえども、 その脈状を全証に参考するの時に当たって、 もし医の心動くときはその証を決断することあたわず。 いわんや病毒に痞塞(ひそく)せられて、 虛脈をあらわし虛損の極み、反って実脈をあらわす者においては、 脈状の疑似に論なく医の心を以て取捨して、 決断するにあらざれば、決断することあたわず。 何ぞただ脈の一診に止らんや。 これ心に在りて了し難きゆえんなり。 手は心を得てよく探り、足は心を得てよく踏む。 もし心手足に在らざれば、探れどもその探る所を知らず、踏めどもその踏む所を知らず。 今その探る所を知り、 その踏む所を知る者は心よくこれを明むるを以てなり。 ------------------------------------------------------------------ <用語の意味> 真面目:本来のすがた、ありさま 活眼:物事の道理をはっきり見通す眼識、見識 上の<読み方>ですが、現代の読み方に近づけるため 個人的な解釈で、 原文をもとに以下のように変更しています。 ・漢字の送り仮名を補足 ・口読点「。」を、文脈から「、」「。」に分別 ・読み方が難しい漢字の読み方を補足、またはひらがなに変更 序文はまだ続きますが、 長くなりますので、続きは次回になります。 参考文献 『切脈一葦』(京都大学附属図書館所蔵) 画像は京都大学デジタルアーカイブより

保護中: 知り合いのおばちゃんとの会話

以前、僕は知的障害者授産施設で、生活支援員として、1年限定の約束で働いていた。 その時、その施設でボランティアで来ておられたおばちゃんと、先日、某所にて久々に会った。 ひさしぶり、からの挨拶で、その施設の現在のよもやま話に花が咲き、 「福祉なんてね、真面目な人間がやるもんじゃないよー」などと、ぶっちゃけトーク。 …… 僕が鍼灸師の専門学校に通っていることを話すと、 「アンタまだモラトリアムかいね~」 と、呆れられながら、苦笑された。 しかしその後、別れ際、おばちゃんから言われたことに対して、背中に稲妻が走った。 「 鍼灸師なんてね、本来は目の見えない、視覚障害者のための職業だったのよ! アンタは【晴眼者】なんだから、しっかり勉強せな、アカンよ!! 」 確かにはっきり、【晴眼者】という単語を飛び出してきたことに対して、僕は瞬時に、おばちゃんの博識さと、己自身の甘さを痛感させられた。 そうだった。 学校に入る前、かなり入念に、自分なりに、業界のリサーチをしていたつもりだった。 そこで異口同音に言われたことは、 「鍼灸学校なんてどこに行ってもおんなじ。国家試験なんて簡単だし。免許をとってからの勉強のほうが遥かに大事だよ。」 と。 しかし、ある意味、自分が視覚障害者の職業を、奪っているのではないか、という認識や自覚はなかった。 もう少し、ヒリヒリした感覚を持って、学業に臨もう。 そう思わされた。 オバちゃんには感謝してる。