六經病機(03)
太陽病病機
【03】邪入經輸
傷寒論
辯太陽病脉證并治上 第五
第十四条
太陽病、項背强几几、反汗出惡風者、桂枝加葛根湯主之。方三。
「太陽病、項・背が几几として強張り、反して汗が出 悪風なるもの、桂枝加葛根湯これを主る。」
辯太陽病脉證并治上 第六
第三十一条
太陽病、項背强几几、無汗、惡風、葛根湯主之。方一。
「太陽病、項・背が几几として強張り、汗が無く、悪風、葛根湯これを主る。」
太陽表邪が經に入れば、經に沿って輸ばれるので、經氣の通りが悪くなり、
筋脉に栄養が届かなくなり、項背部が強張るなどの症候が現われる。これが邪入經輸。
風邪が經に入って輸ばれれば、表が虚して自汗がでる。これが桂枝加葛根湯証である。
寒邪が經に入って輸ばれれば、表が実して無汗となる。これが葛根湯証である。
【参考文献】
『中医病因病機学』東洋医学出版社
『中医臨床のための方剤学』医歯薬出版株式会社
『傷寒雑病論』東洋学術出版社
気になった事を色々と
《標本》
色んなパターンを思考してみる。
例えば、方剤では「芍薬甘草湯が腓返りに効く」とされる。
以前勤めていたところは整形外科の処方箋がバンバン来るので反応聞いてみると確かに症状は緩和されている。
しかし、効かない人やいつまでも服用する人も発生する。
全く効かない一つのパターンとして存在したものが「脾胃が弱って痩せ細っている人」
《現代語訳 黄帝内経素問 P375》
「食物が胃に入って消化されると、一部分の精微な気は肝臓に送られ、そこで浸みこみ溢れた精気は筋に滋養を与えます。」
ここから脾胃の弱りから肝が関わる腓返りが発生すると想像すると、じゃあ※太衝を使って肝血を増やしたとする。
でも発生した肝血虚が副次的なもの何だったら繰り返し起こる事になる。
方剤でも抑肝散の構成をみると
〈柴胡・甘草・川芎・当帰・白朮・茯苓・釣藤鈎〉
説明では、
《中医臨床のための方剤学 P428》
「健脾薬の配合は、脾の健運を通じて肝の陰血を補充し、柔肝する目的である。」
元々脾胃が未成熟である乳幼児の処方であった事を考えると、本は脾胃であると考えられる。
※まだ刺して治した経験がないので、穴性学の知識で仮定しています。
《自身の治療変化》
ここ最近の治療で体がまた変わってきた事を感じる。
自身がほんのり感じていた右の違和感に変化あり。
治療後の自分のお腹を触る。
右の邪が溜まっている部分が熱くなっている。
きっとしっかり治っていってるんだなと嬉しくなる。
そういえば、臍の形も変わったな。
変化を感じた箇所
太白周辺が赤みを帯びている
何か走ったなと思う箇所の付近にある経穴
腎経…兪府
胆経…京門、風市、帯脈、環跳、頭臨泣
脾経…血海、三陰交、商丘、大包、四白
肝経…曲泉
色々あるが使われた手数はとても少ない。
《電車の中で》
電車に乗っていると
こちらが逃げたくなる様なかなりの圧を感じる人がいる。
おそらく警戒心の様なものなのかな。
自身が投影されている部分もあるのかも…
患者さんの体を触るときも気をつけたい。
《臍》
神厥で起こる様な変化は果たして神厥に限った話なのかな。
他の経穴にも起こるのかもしれない。
そうなってくるときっと本に乗っていない様な色んな見方ができる様になるかもしれない。
それが合っているかどうかはまずはきちんと診れる様になった先にある話だけれど。
参考資料
「中医臨床のための方剤学」 東洋学術出版社 神戸中医学研究会著
「現代語訳 黄帝内経素問 上巻」 東洋学術出版社 南京中医学院編
いつ食べるか学
時間栄養学という言葉を初めて知りました。
いつ食べるのかに着目した栄養学のようです。
いつ食べるかが健康に与える影響というのが、一般的に思われている以上にとても大きいことが最近わかってきているそうです。例えば肥満、糖尿病、心疾患、脳出血、老化、うつ、ガンなどにも影響することがわかってきたそうです。
体内時計は一つで全身を調整しているのではなく、全身くまなくあることがわかっています。(ここら辺は五臓六腑の五神の話や子午流注の時間の話を連想してしまいます)それは細胞ひとつ一つに存在する時計遺伝子の機能で、今わかっているだけでも、数十種類の時計遺伝子が確認されています。
たとえばそのうちのピリオドという時計遺伝子は物質の生成と分解を一定の周期で行っていることがわかっています。
この時計遺伝子のサイクルによって食欲や睡眠欲などの周期がつくられています。
しかしこの体内時計と異なる周期で生活すると体内時計自体がズレていってしまいます。このズレがストレスのもとになって身体の不調や病気もとになって現れてくるのです。
それでは、ズレてしまった体内時計をもとに戻すにはどうすればいいでしょうか?
この時間のズレを戻す方法の一つとして食事のタイミングが大事になってきます。
その食事のベストタイミングいつなのか。
先ず朝食は起床後すぐ、2時間以内がいいです。
朝食はズレた体内時計を合わせる役割があります。
起床時は体内時計がズレている状態なのです。実は体内時計のサイクルは24時間より長いため、毎日起床時にはズレています。従って一日の体内時計の開始を朝食で合わせる必要があるのです。
あともう一つ太陽の光を浴びることで体内時計を合わせるのも欠かせないポイントです。脳の中の視交叉上核(主時計)が光を浴びることで全身の体内時計のズレを合わせる働きがあります。しかし食事を取らないと体内時計がまたズレる原因になりかねません。
昼食は朝ご飯を食べてから5時間後ぐらいに日中を迎えるのがよいです。体内時計の観点から言うと、消化吸収系の臓器が一番活発になる時間は日中になります。
夕食のベストタイミングは朝食をとってから10〜12時間後ぐらいです。できれば20時までには終えておきたいです。
子供の頃は当たり前だったことでも、大人になると大人の事情でなかなか実行が難しいのが実情です。だから不健康な大人が増えてしまうのかもしれません。
コロナの後遺症
明日から全国旅行支援が始まるとニュースが報じていました。
楽しいニュースの一方でコロナの後遺症で苦しんでいる人も多く、罹患した人の32%が何らかの後遺症が残っているとのことも報道してしていました。
主な後遺症をあげると
倦怠感
息苦しさ
臭覚異常
集中力の低下
記憶障害
抑うつ
頭痛
食欲不振
腹痛・下痢
脱毛などなど
こう言った後遺症が罹患後、一年以上経っても続く場合もあるようです。
それによって日常の生活に戻れないで社会復帰できない人も多いとのことです。
なかなかこの新型コロナというものは今までにない厄介な感染症です。
また調べてみると、後遺症が起こりやすい人はというと、
高齢者に多い
女性に多い
重症だった人に多い
一言で言うと陽気不足の人たちだとも言えるのではないでしょうか。
子供は風の子で陽気が旺盛だが、高齢者は陽気不足で寒がり。
男性は陽の性質、女性は陰の性質が優勢
重症になった人は闘病により、かなり疲弊していると思われ、陽病が過ぎて陰病の状態になっている。
もともと陽気不足な体質なところ、そこに特異的な病邪であるコロナが入ってきて、打ち負かすことはなんとかできたんだけども、同時にあちこちの臓腑経絡も傷ついてしまったのではないでしょうか。その損傷部位により後遺症の出方が様々あるんだと思います。
ということは、ざっくりいうと不足している気を補う治療が基本となるのでしょう。
そういう意味でこう言った諸々の後遺症に対しては、西洋医学よりも東洋医学の方ができることは大きいと思います。
方剤学(1)
八法
『医学心悟』(程鍾齢)には「病の源を論ずれば、内傷外感の四字によりこれを括る。病の情を論ずれば、すなわち寒熱虚実表裏陰陽の八字をもってこれを統べる。しかして治病の方は、すなわちまた汗・和・下・消・吐・清・温・補の八法をもってこれを尽くす」とある。
温法
温法とは、温裏・散寒・回陽・通路などの効能により、寒邪を除き陽気を回復し経路を通じて、裏寒を解消する治法である。裏寒の成因には外感と内傷の別があり、外来の寒邪が裏に直中するか、陽気不足や誤治による陽気の損傷によって陰寒が内生する。このほか、裏寒には臓腑経絡という部位の違いがある。それゆえ、温法にも温中散寒・回腸救逆・温経散寒の別がある。
○温中散寒剤
中焦虚寒や中焦の裏寒に適用する。
脾胃の陽気が虚衰して、運化と昇陽が不足し、腹痛・腹満・食欲不振・口渇がない・下痢・悪心・嘔吐・舌苔が白滑・脈が沈細、沈遅などの症候がみられる。このほか外寒が中焦に直中して裏寒が生じることもあり、素体が陽気不足の場合に発症することが多い。
(01)理中丸《傷寒論》
(02)呉茱萸湯《傷寒論》
(03)小建中湯《傷寒論》
(04)大建中湯《金匱要略》
○回腸救逆剤
心腎の陽気衰弱による内外倶寒の陰寒証に適用し、陰寒内盛によって生じる陰盛格陽・戴陽などの真寒仮熱にも用いる。
陽気衰微の内外倶寒では、元気がない・四肢厥冷・畏寒・身体を縮めて寝る・不消化下痢・舌質が淡・脉が沈細、沈で無力などがみられる。悪化し、陽気が格拒されると、体表部の熱感・煩躁など格陽の症状や口渇・煩部紅潮など戴陽の症候があらわれ危急状態となる。
(01)四逆湯《傷寒論》
(02)参附湯《正体類要》
(03)回陽救急湯《傷寒六書》
(04)黒錫丹《和剤局方》
○温経散寒剤
陽気の不足や陰血不足で経脉に寒邪を受け、血の運行が阻滞された状態に用いる。
手足の抹消の冷えや肢体のしびれ痛み・脉が沈細などの症候がある。
(01)当帰四逆湯《傷寒論》
大建中湯(温中散寒剤)
〔主治〕
中焦陽虚・陰寒上逆
〔組成〕
蜀椒・乾姜・人参・膠飴
〔方意〕
急いで温中補虚・散寒降逆して止痛・止嘔する。
主薬は辛・大熱の蜀椒で、脾胃を温め散寒除湿・下気散結に働く。
大辛・大熱の乾姜は、温中散寒して中陽を振奮し、逆気を散じて止痛・止嘔する。
甘温補中の人参・膠飴は脾胃を補益して本治し、膠飴は緩急にも働く。
辛甘の薬物のみで中陽を温建し、補虚散寒の力は小建中湯より峻烈であるので「大建中湯」と名付けられる。
後天の本
脾と胃とはともに中焦にあり、脾は陰であり、胃は陽であるので、両者は表裏の関係にある。
胃は受納を担当し、脾は運化を担当し、互いに協力しあっている。
そのため、どちらかに病変が発生したときには、もう一方に害が及んでしまう。
したがって実際に脾胃の病変が起きた時には、水穀の受納・運化・配布機能の全てに渡って影響が現れる。
脾胃は気血を化生し、五臓六腑と体内外を潤して肌肉を満たし、四肢を壮健にするので、後天の本といわれる。
【参考文献】
『中医臨床のための方剤学』医歯薬出版株式会社
『中医病因病機学』東洋学術出版社
胖嫰舌の表裏から考察します。
舌質・舌苔
淡白舌・嫰・胖大・歯痕・点刺
薄白苔が全体的にありますが、
舌根には白膩があるようにみえます。
舌裏
舌下静脈に怒張・蛇行はみられずに
ぼんやりとしています。
外側には暗いところがみられます。
舌面の中央が凹んでいるのが特徴的と思いました。
胖嫰舌のうえに、舌を出すのに力がない為に
凹んでいるのだろうと考えています。
口の開け方にも力強さを感じません。
舌に赤みが少なく、
全身に栄養が行き届いているのか?と心配されます。
舌裏に暗いところがあり、滞りも感じます。
全体的にのっぺりしておりしているのが印象的で
気・血ともに、か細く感じております。
仮説として
裏に虚があり血の停滞がおこり、その表現として舌裏に
血の滞りがあらわれているように思います。
そこが原因となって水分が均等に末端まで届かずに
舌全体に溢れているのでは?と考えます。
原因は同じくして気の停滞もおこり、
力強さを得ることが出来ていないと考えます。
この湿が下焦に累積されていかないかと危惧されます。
舌のみで、想定を考えてみました。
今後も考察を深めたいと思います。
平胃散
先日家の近所へランチに行った。
出てきた量が予想外のボリュームだった。
炭水化物のオンパレード。
この時代に600円でありがたい話ではあるんだけれども、自分の胃の許容量は完全に超えてしまった。
翌日、舌を見るとまあ大きくなっている。
胖大。
腹の様子も変わっている。
ただ水分で多くなっているわけではないので潤ったテカテカな様子は見受けられず。
治療対象がはっきりした平胃散で対処して腹や経穴などの反応を追ってみた。
胃経の様子と腹が変わった。
腹証奇覧だと六君子湯の腹に近かった様に思いますが、平胃散でも対処できました。
便への影響もあり。
先週見させて頂いた患者さんの状態も過食だったのでいい勉強になりました。
穴性について思うこと
先日母が風邪をひき、熱は下がったが咳が治り切らずに寝れないとの事で治療した。
脈は寸部が圧迫されている印象。
腹診後、腹を出した状態で咳をする時の動き方をみる。
触った感覚と視覚的なもの、腹の動き方を確認する。
何となくここかな?と思う部分がある。
配穴では、最初手足で使う。
しばらく置いて、マシにはなるんだけどまだ残っている印象。
背中を出してもらう。
確認すると、膈兪の周辺が湿気を帯びて一部硬くなっている。
そこに鍼を置く。
しばらくすると溢れ出す鼻水。
咳も治ってきた。
後々、学術的にも考え直した。
膈兪は血会であり、本ではやはり血の鬱滞に特に多く使われている印象。
今回は、舌下の血色や舌下静脈・脈などからでも瘀血所見は見られたが、そこは痰湿が中心に絡んでいて起きたものだと感じた。
後々考えると、「血会」に縛られすぎて感覚を疑う怖さも感じた。
また、東洋医学に限らず、一面を見たものがそれが全てだと感じて範囲外の認識が見えなくなる現象は良くある。
全てにおいて太極的な視点は必要だと改めて感じた。
脈診(06)
引用:『中医診断学ノート』P30 ” 3、正常な脈象 ”
平脈
正常な脈象のことをいう。
脈位は浅くも深くもなく、
脈拍は速くも遅くもなく(一呼吸4〜5ーーー60〜90分)、
ゆったりとおだやかで、しかも力強い。
さらに、脈拍の律動が規則正しい。
有胃・有神・有根
正常な脈象(平脈)の特徴は
有胃・有神・有根の三つに表現される。
有胃
脈位は浅くも深くもなく、
脈拍は速くも遅くもなく、規律が正しい。
有神
ゆったりとしていて、しかも力強い。
有根
尺脈を沈取したとき十分に力強い。
そもそも平脈を臨床上で知り得るのはいつなのか?
主訴をもって来られた初診時ではないので、いつ?
”尺脈の沈取で力強い”とするのが、有根とあるが
邪によって強くなることもあるのでは?
人の個性や今まで歩んできた歴史によっても異なり、
”正常な脈象”の把握って実は難しいように思う。
【参考文献】
『中医診断学ノート』東洋学術出版社
単純化など
単純化
ありがたい事に最近色々やることをやらせて頂いている。
すると色んな余計なものが入りにくくなってきた。
余裕が無くなるとミスを起こしてしまう傾向は相変わらずですが、そうならない様に自分をコントロールしていきたい。
やるべき事に向き合ってさっさとクリアしていく。
そのためにも自分の中で色々単純化させていく必要あり。
バイアスを取っ払う。
治療にも繋がる。
批判的思考
自分は裏が見えていない事が多々ある。
何か形を受け取ったものも、内包されるものが違っている事がある。
その違和感に気付けるか。
先に起こるものへヒントが隠されている事もある。
思い返せばでは遅い。
ある種の健全な疑う心も必要。
清濁全て飲み込める様に。
それを瞬間に判断できる様に色々経験を積む必要あり。
繕うな
良いものを作ろうとした時、そこへ自分がどの程度関わる事が良いか。
まだ配分が上手くいっていない。
目的の達成のためにどうすればいいか。
人を信じてお任せするところはする。
お任せして良いかわからないなら相談する。
そこを任せられないのもある種のエゴ。
自分の弱さ。
人と向き合う
どんな忙しかろうが寺子屋の時にお身体を貸して頂いている患者さんにきちんとで向き合う。
向き合い方が全然足りない。
患者さんに限らず、大切にすべき人たち全員に言える話だと思う。
となって来ると相手への話。
本質的に大切なのは相手の事をどれだけ考えれるか。
良い面も悪い面も向き合う。
というか善悪なんてないから。
それがどの様な現れ方をするかというだけ。
わかっていたら躱せるものも増えてくる。
















