淡々
菜根譚を読んでいると色々ヒントが散らばっていると感じる。
「醸肥辛甘非真味、真味只是淡。神奇卓異非至人、至人只是常。」
神農本草経を読んでいても、神農はあくまで1人ではないと思いますが、その人達はこういった感覚も持っていたように感じる。
もしくは美食に溢れた現代人だからこう思うのか。
また、それをどの様に表現したか。
切経を行う時も同じことだと思う。
何かをやろうとするではなく、無駄を削ぎ落として純粋でありたい。
雑音なんて知らない。
患者さんとの一対一。
一つ一つが淡々とした真剣勝負。
そういった気持ちで望みたい。
参考書籍
座右版 菜根譚 講談社 久須本文雄
紫色から色々探る
昔の人の認識を知るために。
神農本草経では霊芝を「青芝、赤芝、黄芝、白芝、黒芝、紫芝」と六種に分類している。
神農本草経攷異
青芝「味酸平。…補肝気。」
赤芝「味苦平。…益心気。」
黄芝「味甘平。…益脾気。」
白芝「味辛平。…益肺気。」
黒芝「味鹹平。…益腎気。」
紫芝「味甘温。…益精気。」
紫以外の五色に関しては通常の解釈でわかりやすい。
では紫の益精気とは何なのか。
まずは紫について考えたい。
これは高貴な位を表す事も多くある。
例えば紫禁城の名前の由来など。
日本でも儒教を学んでいたとされる聖徳太子が定めた冠位十二階では、紫(徳)・青(仁)・赤(礼)・黄(信)・白(義)・黒(智)との順位で位が定められている事から紫の立ち位置と文化の伝来が伺える。
人体にも紫宮という経穴があり、それが何を指すのか。
神仙思想でも度々出てくる紫。
五色以外にも着目する必要がありそう。
参考資料:
神農本草経攷異 有明書房 森立之著
煉丹術の世界 大修館書店 秋岡英行・垣内智之・加藤知恵著
春
試験が終わり、色んなことに挑戦する余裕が出てきました。
色々調べていくと、1、2回生の時の様に好きな事に浸かっていき、その中で想像が膨らんで楽しいです。
最近は「生きるとは何なのか」といったテーマで調べ物を進めています。
その中で季節感というものも改めて取り入れたいと思いました。
今の季節で言うと春に何を感じるか。
1日1日と変わりますが、今は冬のキリッとした厳しさに比べてフワフワする日が多い様な…
色々体感しながら学びを進めていきます。
血について
前回は気についてまとめたので、今回は血についてまとめる。
血には、水穀の精微から作られる方法と、腎精から作られる方法の2種類がある。
● 水穀の精微より
脾胃の「運化作用」によって、飲食物から作られた水穀の精微は、営気となり、津液と共に脈中を通って肺に到達する。
肺で清気と合わさり、さらに心火によって熱されると赤くなり、血となる。
● 腎精より
腎陽によって温められることで、腎精が血に変わる。
また逆に、血が精に転化することもあり、これを「精血同源」という。
血と関係の深い臓腑
● 心「神」
心には「神」が宿る。
神とは、魂や精神活動を司るもの。
心に血が十分に満たされていないと精神活動が乱れ、不眠・多夢・健忘・狂躁などを引き起こす。
また、心は血を全身に巡らせるポンプの働きも持っている(=推動作用)。
● 肺「百脈を朝す」
「朝す」とは、集めて送り出すという意味。
全身の経脈は肺に集まり、ガス交換によって新たな宗気を得て、再び全身に巡る。これを「百脈を朝す」という。
肺はこの働きを通じて血の循環に関わっている(=宣発作用)。
● 肝「肝血」
肝は血を蓄え、必要に応じて身体各部へ血を送り、調整する。
日中は身体の動きや精神活動のために血が分布し、睡眠や休息のときには肝に戻る。
この分布がうまくいかないと、目・筋肉・月経などに不調が現れる。
→ 肝の「疎泄作用」や「蔵血作用」に関係する。
● 脾「運」び、生「化」する
血や気など、人体に必要な生理物質は水穀の精微から作られる。
脾が健康でなければ、こうした生理物質を作る源がなくなり、正常な活動を維持できない。
また脾には、必要な生理物質を血管の外に漏らさないようにする働き(=統血作用)もある。
この機能が失調すると(脾不統血)、皮下出血・血尿・不正性器出血などの症状が起こる。
まとめ
血は「水穀の精微」または「腎精」から作られる。
精神・血流・栄養分布など、血はさまざまな臓腑と深く関わっている。
脾・肺・心・肝、それぞれの機能がバランスよく働いてこそ、血が正常に生成・循環・調整される
<参考文献>
神戸中医学研究会(1995)『基礎中医学』株式会社燎原
関口善太(1993)『やさしい中医学入門』東洋学術出版
高金亮(2006)『中医学基本用語辞典』東洋学術出版
「気」4 種
気は「質ありて形なし」と説かれる。
運動する物質として存在し、
身体に不足すれば「気虚」、
遅滞すれば「気滞」となり身体の機能を妨げ、病の元となる。
気の材料は
・腎の陽気
・脾胃が運化する水穀の気
・肺により吸入された清気
以上の3 つである。
腎の陽気によって水穀は蒸騰され気化し、肺で清気と合することで「気」となる。
・宗気
まさに今述べたように、肺で清気と合わさり「気」となったものを「宗気」と呼ぶ。
「胸中大気」とも呼ばれ、肺から全身に運ばれる。
宗気の主な機能は2 つ存在し、「発声や呼吸に関わる」「心の機能補助」である。
・原気
人は父母から受け継ぎ生まれ持った精(先天の精) を消費して生命活動を行うが、
水穀の精により後天的に補充することができる。
そうして形成された「腎精」から形成されるのが「原気」である。
元気は三焦を通じて全身を巡り、成長発育促進やさまざまな生理機能の推進を行う。
生命活動の原動力であり、この気が充実していれば
病を生じることは少ない。
「元気」とも書き、そのイメージに易い。
・営気
営気の「エイ」は、営運の「営」であり栄養の「栄」である。
脈中を血液と共に流れ、全身を栄養して生理活動を推進する。
血液とは営が津液が合わさったもので、
営は血液中の気であり、
区別はできるが切り離すことはできない。
・衛気
衛気は脈外を流れる。
俊敏で力強い。
「外邪の侵入を防ぐ」「肌肉・皮毛を温煦する」「毛穴と汗孔の開け閉め」を担当する。
営気と衛気はそれぞれ、内と外、陰と陽を護りお互いに均衡をとっている。
またお互いに転化することもあり相互的に作用している。
<参考文献>
神戸中医学研究会(1995)『基礎中医学』株式会社燎原
関口善太(1993)『やさしい中医学入門』東洋学術出版
高金亮(2006)『中医学基本用語辞典』東洋学術出版
津液について
津液とは、生体における正常な状態の水分(=水液)を指す名称。
飲食物から作られる「水穀の精微」のうち、脾で気化された水液の部分が津液となる。
また、それ以外にも大腸が便を形成する際に余った水分が脾に戻され、それも津液として再利用される。
津液の分類
津液は、その機能・分布・性質により「津」と「液」に分けられる。
● 津(しん)
清く、希薄
流動性に優れる
血液の成分にもなる
目・口・鼻・皮膚などに分布
● 液(えき)
濁っていて、粘り気がある
流動性は低く、限られた部位に存在
骨・関節・脳・髄などに分布
中医学では、「津」を含めたこれらを「陰津」と呼び、重要な生理物質として重視する。一方で、「陰液」という言葉は、漢方医学で用いられる用語であるようだ。
↓
『漢方概論』(矢数道明, 創元社, 1981年)p.45
「陰液とは津液のうち陰性のもので、血と共に陰を構成し、身体を滋養する。」
『黄帝内経・素問』五臓生成篇
「陰津者、精気也。」
人体の水液代謝に異常が起こると、津液は以下のように変化する。
津液 → 湿 → 水 → 飲→ 痰
このように、粘稠性や固体性が増すことで、正常な津液とは異なる病理的産物へと変化する。
中医学では津液の「液」も、この病的状態を含む概念として使われることがある。
津液と関係の深い臓腑
● 脾(運化・昇清)
水穀の精微から水液を取り出し、津液を作る。
作られた津液は全身へ運ばれる(=運化作用)。
まず肺に送り上げることで、シャワーのように上から全身へ散布しやすくなる(=昇清作用)。
● 肺(宣発・粛降)
位置の高さを利用し、津液を全身に行き渡らせる(=宣発作用)。
また、全身を滋養した後の廃液(=濁)を膀胱に送り出す(=粛降作用)。
これらの働きにより、水の通り道に滞りがないように調節する。
● 腎(主水・開闔)
「腎は水を主る」とされる。
膀胱に送られた「濁」から、有用な「清」を蒸騰させて肺に戻し、不要なものは尿として排出。
膀胱の開閉(尿の排出)も腎が管理している。
まとめ
津液は、飲食から得られる水穀の精微などから生成される、体に必要な水分。
津と液に分けられ、それぞれ分布と性質が異なる。
脾・肺・腎の協調した働きによって、全身に適切に津液が配分・排出される。
水分代謝が乱れると、病的な「湿・痰」などへと変化していく。
<参考文献>
神戸中医学研究会(1995)『基礎中医学』株式会社燎原
関口善太(1993)『やさしい中医学入門』東洋学術出版
高金亮(2006)『中医学基本用語辞典』東洋学術出版