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東洋医学・鍼灸医学の研究用ブログです。

胞宮

髄海と同じく、奇恒の腑である胞宮について。 ーーーーーーーーーーー 女子胞は通常子宮のことを指すが、機能的には卵巣や輸卵管を含めた生殖器全体を統括するものと考えられ、胞宮・子宮・血室とも呼ばれる。 心・肝・脾・腎および衝脈(十二経脈の血が集まるところで十二経の海・血海と称される)・任脈・督脈と関連し、月経・妊娠・出産に関与する。 衝脈・任脈・督脈ともに胞中より起こる。 〈月経〉 月経は衝脈を通じて胞宮から出る血液であり、天癸の働きにより衝脈が盛んになり、心の推動と肝の疎泄によって暢行になった血が下泄して月経が来潮し、脾の統血によって月経が停止するので、定期的な月経になる。 健康な場合は、血の量も十分であるため症候として現れないが、血虚や気血両虚の場合、症状の出現や憎悪が起こる場合がある。 また、肝の疎泄は、衝脈・任脈に流れる血を女子胞に送り出す役割を担っているため、月経が近付くと疎泄が変動しやすい状態となる。肝鬱気滞や肝陽上亢の場合、頭痛・急躁・不安感・乳房の脹痛・眩暈などの症状が出現または憎悪しやすくなる。 また、精の不足や腎陽の虚損、脾気の虚損によっても、月経異常が起こる。 〈妊娠〉 女子胞は、懐妊後は胎児を保護し発育させる。 胎児が女子胞の中にいる間の栄養供給は、衝脈・任脈によって行われる。 妊娠の有無に関わらず、女子胞の機能維持には肝・腎の機能が正常であることが必要であり、肝・腎に何らかの機能失調が起こると、不妊症となる場合がある。また、肝・腎の機能失調により精血が不足すると、衝脈・任脈の機能が低下し、女子胞を滋養・固摂することができなくなり、流産する場合がある。 妊娠時は、胎児に精血を供給しているために、母体は精血の不足が起こりやすい。また、胎児は陽盛であるため、母体も陽に編盛しやすい傾向にある。 出産は、正常分娩であっても少なからず生理物質を消耗するため、正気の不足を招くことが多い。そのため、出産の回数が多い、堕胎の既往がある、出産後の養生が不十分であることなどは、気・血・精の不足が起こり疾病の原因となり得る。 ーーーーーーーーーーー 胞宮=子宮、不妊=腎虚といったような認識しかほぼなかったので...  調べていて合点いくことも多く、面白かったです。 『新版 東洋医学概論』医道の日本 『やさしい中医学』関口善太 『基礎中医学』神戸中医学研究会 西

臓腑について学ぶ(02)

伝導不随:大腸の腑氣の鬱滞と津液の不足により起こる。 大腸 〇 燥熱傷津(熱秘) 熱邪と糟粕が結びつき、津液を焼いて乾燥させる。 熱の原因として 「表寒が裏に入って熱化する」 「温邪が肺胃より大腸に順伝する」 「五志の異常が火化し、胃腸を攻撃する」 「味の濃いものばかりを食べて内熱が生じる」 〇気機鬱滞(気秘) 肝氣の鬱滞より脾胃の氣機も鬱滞し、腸道の伝導機能が動かない。 そして火化する。 〇気血虚衰(虚秘) 大腸の伝導能力がなくなってしまう。 排便後は疲れてしまう。 氣血の欠虚原因として 「普段から氣血が欠虚しており、津液が不足している」 「産後の陰血不足」 「長患いの為、脾肺の氣が虚す」 「年老いた為に元気が不足」 〇陰寒凝滞(冷秘) 腸道が温まらず氣機が停滞する。 冷やす原因として 「冷たいものを食べ過ぎ中焦の陽気が打撃をうける」 「長患いの為に脾胃が陽虚になり寒が発生する」 《私議》 氣がスムーズに動いているのか?水分量が適切なのか?との問いについて、 他の臓腑にも共通するのか、考察します。 鍼灸学生の頃、解剖学の先生に小腸と大腸の違いを質問した事がありました。 細胞の形態の違いなどから、大腸を「要は外ですわ。」と教えられた事がありました。 なるほど!と合点がいったのを覚えております。 【参考文献】 『中医病因病機学』東洋学術出版社

開業いたします。

こんにちは稲垣です。 私が鍼灸学生の時も、国家資格を得てからも 同じ質問を受けた事がありました。 「なぜ一鍼堂なのですか?」 です。 学生向けの勉強会を 一鍼堂で開催する準備をしておりましたので、 その際に、未来の鍼灸師さんたちに向けて話そうと 思っていたのですが、 このご時世で学生さんたちに集まって頂く機会が なかなか持てませんので、 お伝えしておこうと思います。 (パソコンの画面を通じてのテレビ電話では 臨場感がありませんので、 実際に集まって頂く事を待ち望んでいたのですが、 非常に残念です。) 私は鍼灸学生の一年生の時より 林院長にお世話になりました。 各種勉強会など、様々に参加させて頂き、 大切な価値観を沢山頂戴しました。 学生の頃からの四年間ですから、それはそれは数知れず。 院長の治療を受けさせて頂き、 最初に感じたものは、“テコ”です。 “重い岩”を退けるには支点をおいて、 長い棒のようなもので力点に力を加え 岩という作用点に力を伝える。 そしてゴロンと動かせる。 なるほど! 臓腑へアクセスさせるには、こうするのか! と鍼治療を体験させて頂きました。 同時に、 このテコよりもっと良い方法はないのか? 支点を岩に近づけたらどうだろう? 力点をより遠くに伸ばしたらどうだろう? ”より良い方法を探し続ける好奇心”を教えられました。 学問に対しての「もっと!もっと!」 というエネルギーを感じ、 同じ場所を掘り続ける魅力を院長より感じました。 私はそんな環境が心地よく思い 一鍼堂に通い続けたのだと思います。 「なぜ一鍼堂なのですか?」 という問いの答えとしては 「探究し続ける楽しさを感じたから。」 となるのでしょうか。 ”面白さを教えて頂いた” これは、私にとっては極めて重要です。 そして、 (話が急に展開して申し訳ありませんが、、) 開業いたします。 その”面白さ”を人生の楽しみにして行きたいと思います。 “修行を完了させて一流のはり師になったから店を持つ” というのとは全く異なりますが 鍼灸道の修行の為に、 自身の鍼灸院を持つ事といたしました。 ベッドが一つだけの小さな所ですが 臨床の場として、 研究の場として 励んでまいります。 面倒を見て頂いた院長の気持ちを察するに 痛恨を感じるのと、院長が長期的に考えて 準備されていたもろもろを考えると 心苦しいだけではありません。 罵倒の裏にある優しさを感じるだけに 申し訳ない気持ちなど多々あり、 私自身の心中が穏やかではありませんが 怨まぬ為に、 嫌いにならぬ為に、 少し間合いをとることとしました。 身を切り分けて、与え続ける院長のアンパンマン力を感じて お返しをしなければと、学校を卒業した際に思い続けて 現在まで至っておりますが、必ずお返ししていきたいと思います。 いつになる事やら… 小さな小さな鍼灸院を行っていきますが 温かく見守って頂けるとありがたく思います。 お世話になった皆様に本当に感謝しかありません。 ありがとうございました。 今後とも宜しくお願い申し上げます。 令和3年6月 稲垣 英伸

経穴(01)

【地機】 学生時代に使用した経穴の教科書を新・旧で比較してみる。 旧教科書の”地機”は”陰陵泉”より5寸下、 新教科書は”地機”は”陰陵泉”より3寸下、とされている。 考えらる可能性は「2つとも違う」「片方が正解」「2つとも正解」。 重要なのは点でなく、線をとらえる事にあるのかな?と思う。 今後の切経の参考にして行きたいと思います。 旧 『経絡経穴概論』(株)医道の日本社 初版:1992年3月20日 ●地機(郄穴) 取穴部位:内果の上8寸、脛骨内側縁の骨際に取る。 (注)脛骨内側顆の下際から下5寸に当たる。 筋肉:ヒラメ筋 運動神経:脛骨神経 知覚神経:伏在神経 血管:後脛骨動脈 新 『新版 経絡経穴概論』(株)医道の日本社 初版:2009年3月30日 ●地機 SP8(脾經の郄穴) 部位:下腿内側(脛側)、脛骨内縁の後際、陰陵泉の下方3寸 取り方:脛骨内縁の後際、内果尖と膝蓋骨尖とを結ぶ線を3等分し、 膝蓋骨尖から3分の1の高さに取る。 解剖:ヒラメ筋・長母指屈筋〈筋枝〉脛骨神経, 《皮枝》伏在神経,後脛骨動脈 【参考文献】 『経絡経穴概論』(株)医道の日本社 『新版 経絡経穴概論』(株)医道の日本社

突発性難聴、受付

  突発性難聴 先日突発性難聴になりました。   最初は何か辺だな?程度のものがいきなり詰まり、耳が塞がった。   片耳でしたがこの間オススメ頂いた映画の通りの体験で、トンネルの中に列車が入った時の耳の詰まりがずっと続く感じでした。   西洋医学的な原因を調べていくと早めの処置を行わないとずっと聞こえない様になる可能性もあるとの記事が多く、患者の視点に立つとこれは怖いことだと感じました。   同時に自身が施術者になった際は全て自己責任で行わなければいけないので、 「もし知識不足により患者の聴力を失わらせてしまったら…」と怖くもなった。   知っておかないと怖いことが沢山ある。   東洋医学一辺倒だとその辺の責任が取れない事もあるのでしっかり勉強しないとなと再認識させられる出来事でした。   東洋的に考えると脈も沈んでおり、臓腑の弱りから生まれた邪気が下焦に蓄積して清竅への気血を送れない様にしていると思いました。   治療していただいて面白いなと思った変化が 翌日、鏡で舌を確認した時、色が少し暗めだった。 確認後5分程度で急に唾液が溢れ出した感覚があったので急いで鏡をみると色が赤みを帯びてきたと同時に表面以外にも色の変化が見られた。   治り方としては一気に治るという訳ではなく、耳が抜けたと思ったら耳鳴りに変わった。   湿邪は取れにくいので、一定の残存は見られるのだと思う。   また、施術も状況に応じて変えていく必要性も感じました。   受付 対人関係でもお互いが尊重できていないと治療にならないと言った事を最近感じる。 素直な人は鍼も薬も効きやすいと聞いた事もあり、自身でもそれを感じる事がある。   受付の仕事としては先生の治療しやすい環境作りが主になるものだと思いますが、 案内する前の患者さんを治療の受けやすい状態で送り出す事も将来的な自身の治療に繋がると感じました。   一般的に正解とされる様な対応を一様に全ての人にとっていてもそれが下準備として正解になる訳ではない。   どの様に相手に映るかも考えていかないといけないと思います。   色んな人の空気、態度、言葉遣いが勉強になります。

中国の思想(04)

老子 二十六章 ”静”は”動”を支配する 重為軽根、静為躁君。 是以聖人、終日行不離輜重。 雖有栄観、燕処超然。 奈何万乗之主、而以身軽天下。 軽則失本、躁則失君。 重は軽の根たり、静は躁の君たり。 ここをもって聖人は、終日行けども輜重を離れず。 栄観あるといえども、燕処して超然たり。 いかんぞ万乗の主にして、身をもって天下より軽んぜん。 軽ければすなわち本を失い、躁なればすなわち君を失う。 (引用:『中国の思想[Ⅳ]老子・列子』P63) 《私議》 修行中の身において患者さんを診させて貰う際、 ”上逆下虛”の場合には、陰陽の重りの方をしっかりと保つ事を考えます。 四診合算において、そのままスタンダードで良いのか悪いのか、、 足りていない情報をかき集めるのに必死になってしまいます。 問診に於いても、患者さんとの間合いに注意しないといけないな・・と思う日々です。 【参考文献】 『中国の思想[Ⅵ]老子・列子』徳間書店

今日の一曲

Takaaki Itoh - Bloom After Broken Life  https://www.youtube.com/watch?v=8nnwbs_umFA 勉学や人生の諸問題で、煮詰まった時に、僕はたまにこれを聴き返す。 【破綻したあとに咲く、「何か。」】 こういう音楽を、勉強時のBGMに取り入れることがあります。 いったい、何回、聴いた(=破綻≒何か咲く)ことやら…… ※林先生より「Blogは自由に、なんでも書いていい。」と承ったので、今後はこういう記事も増やしていきます。 ※怒られたら止めます。

舌診(08)

治療家のT先生に舌の研究の為にご協力頂きました。 舌を撮影させて頂く時は、 念のために表だけで2枚、裏だけで2枚撮影します。 色調の違いを考えて今回はこの画像を選択しました。 表 裏 舌質 淡白舌 嫰・点刺・歯痕 舌苔 白苔 全体・薄苔 仕事終わりに撮影をさせて頂こうかと思っておりましたが、 時間がありましたので、業務の前に撮らせて頂きました。 舌尖の紅が痛々しいですが、”朝” というのも要因の一つかと思います。 裂紋が出来てからかなりの時間が経過しているのかと思います。 T先生の舌は昨年より診させていただいておりますが、 瘀斑の境目が緩やかに感じます。 状況により変化があるのでしょうが、 安定している好転反応を感じます。

異名同穴③

李世珍の下で働いていた方に、異名同穴について尋ねたことがあります。 「李世珍の家の伝来の呼び方がある。」との事。 その時は、中国の『宗族(父系中心の一族)』や『圏子(利益を共にする集団)』といった文化圏を想像しました。 ③3つの異名のあるもの 穴名         異名 陰郄穴    :   少陰郄穴、石宮穴、手の少陰郄穴 隠白穴    :   鬼疊穴、鬼眼穴、陰白穴 会陰穴    :   下極穴、平翳穴、屏翳穴 京門穴    :   氣付穴、氣兪穴、腎募穴 氣衝穴    :   氣街穴、羊屎穴、氣冲穴 厥陰兪穴   :   関兪穴、厥陰穴、闕兪穴 三陽胳穴   :   通門穴、通間穴、通関穴 上巨虚穴   :   巨虚上廉穴、上廉穴、足の上廉穴 衝門穴    :   慈宮穴、上慈宮穴、前章門穴 水分穴    :   中守穴、分水穴、正水穴 人迎穴    :   頭五会穴、五会穴、天五会穴 兌端穴    :   壮骨穴、兌通鋭穴、唇上端穴 太淵穴    :   鬼心穴、太泉穴、大泉穴 大陵穴    :   心世穴、鬼心穴、心主穴 中膂兪穴   :   脊内兪穴、中膂内兪穴、背中兪穴 通天穴    :   天臼穴、天旧穴、天白穴 手の五里穴  :   尺の五里穴、大禁穴、尺の五間穴 天突穴    :   玉戸穴、天霍穴、天瞿穴 然谷穴    :   龍淵穴、然骨穴、龍泉穴 陽輔穴    :   絶骨穴、分肉穴、分間欠 陽陵泉穴   :   筋会穴、陽の陵泉穴、陽陵穴 白関兪穴   :   玉関兪穴、玉房兪穴、陽兪穴 胳却穴    :   強陽穴、脳蓋穴、絡郄穴 【参考文献】 『臨床経穴学』東洋学術出版社 『鍼灸医学事典』医道の日本社 『新版 経絡経穴概論』医道の日本社

欲しかった本入手

  以前から欲しかった意訳黄帝内経太素が安値で売られていたので手に入れる事ができました。   まだ読み始めたところですが自身が内経を読んで疑問に思っていたところがハッキリ書かれていたりして勉強になります。   今回は勉強用のブログとして、書籍から学んだ事を書いていこうと思います。   本一辺倒にならない様に、モードを切り替えながら生活していこうと思います。   まだパラパラ読み始めたところですが、気になった部分の一部を書いていきます。   意訳黄帝内経太素 P131 五臓命分 「志・意と者(は)精・神を御し魂・魄を収め、寒・温を適え喜・怒を和す所以者也。」 P132 「志・意が和す則(と)精・神は専直(すなお)となり魂・魄は散ぜ不、悔・怒も至ら不、五臓が邪気を受けることは不矣(ない)」   ここでは志・意が切り離されていない点も気になる。   現代語訳 黄帝内経霊枢 上巻P161 本神篇 「物を任うゆえんの者これを心と謂う。意の存する所これを意と謂う。意の存する所これを志と謂う。」 全訳 内経講義 P201 「李中梓の注「意がすでに決まり、堅固になったものが志である。」」   記憶などで例えられた場合、意は短期記憶力で志は長期的記憶力と説明されていました。 (意の在する所これを志と謂う。)   医学三蔵弁解 P151 帰脾湯 「人参は心気を補い、遠志は腎中の志気を補います。心腎の二気がよく交通すると、脾気がその昇降の間を保ち、三臓の気が自然と充実してきます。」   帰脾湯は心脾両虚の薬ですが、心神不交も兼ねる。 しかし帰脾湯の物忘れの特徴的な現れ方は「直前の記憶がない」という点。 さっきまで何をしていたのか分からなくなる。(意病) でも、意志は切り離せるものではなく、実際に遠志という生薬で腎気(志気)を心に届ける過程で脾気(意)を巻き込んで治している。 この後のストーリーとして意志が安定して魂・魄なども安定、喜・怒も過剰なものが無くなればいいなと思いました。   参考書籍 意訳黄帝内経太素 第一巻 築地書店 小曽戸丈夫著 現代語訳 黄帝内経霊枢 東洋学術出版社 南京中医薬大学著 全訳 内経講義 たにぐち書店 田久和義隆訳 医学三蔵弁解 たにぐち書店 伴尚志 現代語訳