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東洋医学・鍼灸医学の研究用ブログです。

切脈一葦

切脈一葦 序文2

こんにちは、大原です。 前回(切脈一葦 序文1)は、 『切脈一葦』の二ページ目の最後の一文の途中で終わりました。 今回はその続きからになります。 今回も原文から文意を汲み取って、 文章の読み方を考えていきます。 <読み方> 王叔和(おうしゅくか)、この理を知らず。 心と指とを分けて論ずること、一笑に余れり。 また指を以て診する法は、世に伝えて教えと為すべし。 心を以て了する法は、其の人にあらざれば伝うることあたわず。 しかるに今その伝うることあたわざる法を易しとし。 その伝えて教えと為すべき法を難かしとす、思わざるの甚だしきなり。 またその明らかし難き所の脈状を書き著して、 教えを世に垂れんとす。 これ全く己を欺き、人を欺くの甚だしき甚だしなり。 歴代の医、これを弁ずることあたわず。 却ってその説を潤色して、脈の一診を以て、病を知るの法とす。 これ古人の脈法廃して、ただ王叔和の脈法のみ。 世に盛んなるゆえんなり。 家君かつて曰く、 凡そ脈の変態多しといえども、その状十余種に過ぎず、 ただこれを形容する所の文字多きのみ。 王叔和の徒これを弁ぜず。 形容する所の文字を以て、脈状の名と定めて、一字一字に註解を加えて、 二三十の脈状と為す。 これ脈学塗炭に墜(お)ちるゆえんなり。 ○敏ならずといえども、黙してこれを看過するに忍びず。 因りて切脈一葦を作ると。 これ家君が文字の脈状を破りて、脈状の文字を活用するの大意なり。 この書は固(もと)より大河の一葦にして、 脈学を尽くすことあたわずといえども、 これをもって学ぶときは、古人の流に溯(さかのぼ)るべし。 古人の流に溯ぼるときは、古人と異なることなし。 古人何人ぞ今人何人ぞ、 ただ古人は志を厚くして深くこの道を窮(きわ)めるのみ。 これ今人のあたわざるところにあらず。為さざる所なり。 もし今志を厚くして深くこの道を窮(きわ)める者あらば、 脈を診するに臨みて何ぞ古人に譲らんや。 もし古人に譲る心 (以下、次のページ、下に続く) 有りて、脈を診するときは、必ず心に安ぜざる所あり。 もし心に安ぜざる所あるときは、必ずその病を決断することあたわざるなり。 故に脈を診するに臨みては○がごとき浅劣の者といえども、 必ず古人と異なることなき心を以てこれを診す。 いわんや明達の人においては、 ○が古人と異なることなき心を以て診すると同じからず、 必ず古人と全く同じき者あらん。 豈(あに)ただ古人と全く同じきのみならんや。 必ず古人のいまだ発せざる所を発するものあらん。 後生畏るべし。 これ○が議するところにあらざるなり。 天保辛卯春三月十五日男○謹序 --------------------------------------------------------------------------------- 況(いわん)や:もちろん、言うに及ばず 豈(あに):どうして〜(反語) 決して〜ない --------------------------------------------------------------------------------- 前回に続きですが、 その内容は、著者の 「王叔和は何も分かってない」という 非常に厳しい批判から始まります。 脈診で必要なのはそれを診る心であるが、 王叔和は脈の状態を何種類かに分類して 「○○脈であれば△△の病である」と、 脈の状態でその場合の病はこうであるというように分類しているが、 こんなことが正しいのだろうか・・・、 このような考え方が広まってしまうのは脈学にとってマイナスではないか、 これでは脈学は地に堕ちてしまう、 もうこれは見過ごせない!、 ということで、この『切脈一葦』を記したと書かれています。 その後に、前回の記事の内容とからめ、 まとめのような形で 大事なことも書かれています。 ちなみに王叔和は、 有名な『脈経』という大書を著した人物として有名です。 また『傷寒論』の編纂もされたといわれており、 その功績は非常に大きく、 東洋医学の歴史の本には必ず載っているイメージがあります。 (為沢先生が王叔和についてのブログを書かれています。 https://www.1sshindo.com/blog/zenith17665/ ぜひ参考にしてください。) 参考文献 『切脈一葦』(京都大学附属図書館所蔵) 画像は京都大学デジタルアーカイブより

【学生向け勉強会】「はじめから素問を読もう!」のお知らせ(4月10日(火)19時〜)

こんにちは、一鍼堂の大原です。 鍼灸学生の皆さんへお知らせです。 下記の通り、黄帝内経 素問の勉強会を開催いたします! こんな人にオススメです↓↓ 「黄帝内経を読んだ方が良いと言われたけれど、どうやって読んだら良いか分からない」 「自分一人では勉強がなかなか続かない」 「将来は、東洋医学の伝統的な考えに基づく鍼灸治療を行っていきたい」 「土日は忙しくて勉強会に参加できない」 概要は以下の通りです。 <「はじめから素問を読もう!」勉強会> 【日時】:2018年4月10日(火)19時〜 (1時間半〜2時間程度) 【場所】:一鍼堂 大阪本院内(「緑地公園」駅から徒歩3分ほど) 【対象】:鍼灸学生の方 【内容】:黄帝内経 素問を読んでいきます。 具体的には ・素問の歴史や、漢文の文法について ・上古天真論篇(第1) ・四気調神大論篇(第2) (内容は、時間の都合等で変更になる場合もございます。御了承ください) 今回の内容は、 現在進行中の「素問を読もう!」勉強会の、 これまで行ってきた内容と同じです。 ですので ○今までの講座に参加できなかったという方 ○この4月から勉強を開始したいという方 は、この機会を逃さず、ぜひエントリーください!! (現在進行中の「素問を読もう!」の告知はこちら→https://toyoken.org/504/) 【参加費用】一回につき2,500円 参加希望・お問い合わせはこちらへ↓ 学生向け勉強会フォーム ↑「エントリーしたい議題」の欄に、「4月10日素問」とご記入ください。 --------------------------------------------------------------------------------- 今回だけでなく、その後も週1回ペースで 素問を読んでいくことで、 半年後には漢文を読めるようになることを 目標にしたいと思います。 興味がありましたらぜひお問い合わせください! エントリーされる方はこちらへ↓ 学生向け勉強会フォーム ↑「エントリーしたい議題」の欄に、「4月10日素問」とご記入ください。 ------------------------------------------------------------------------- 【最後に】 新2、3年生の鍼灸学生さんは 色々な技術を習得していく中で、 将来自分が進むべき道というのが 少しずつ見えて来たかも知れません。 また新たに鍼灸学生さんになる方は 夢を持ってこの業界に進もうと 思っておられると思います。 ですが、伝統的な鍼灸をやってみたいが 古典を学ぶ場所が無いという声を聞きます。 そんな皆さんの為に、継続して学習していく 勉強会を開催することとなりました。 このような週1ペースの勉強会は初の試みですので 正直どのようになるか分かりませんが、 参加者の方と一緒に勉強させていただく気持ちを忘れず、 共に学んでいけたらと思います。 一定数に達した場合は 定員とさせていただきますので、 ご容赦下さいませ。 (前日までに人数が集まらない場合は 中止とさせて頂きますので ご了承くださいますようお願いします。) 【講師】一鍼堂 大原 学生向け勉強会フォーム ↑「エントリーしたい議題」の欄に、「4月10日素問」とご記入ください。 一鍼堂

食事制限など

空気感 自身の出す空気がいい状態の時はキチンと周りを見れている。 悪い状態の時は何か引っ掛かりがあってそこに引っ張られている。 自分をしっかり持つ。 それしか解決策はなさそうです。   腹の陰圧 体の使い方で自分の中で大きな発見があった。 自分の身体は片方の腹筋が弱い。 特に陰圧をかける動作を怠っていた様で、そこが原因で側面の筋肉や腰に負担をかけていた。   過度な食事制限 長期的に続くと脾胃飲みではなく腎も痛める。 すると志も傷つくので継続する事が難しくなり、パニックも起こしやすくなるし、記憶への影響も現れる。 拒食症の方は何人か出会った事がありますが、深いものになると中々治療が難しそうだなと感じます。  

東洋医学探訪(02)

鍼灸学生の授業の一環で解剖実習があります。 東洋医学を学ぶ者として 『太古の医家達も、間違いなく解剖実習で学んでいるだろうな』 と考えておりました。 京都で医学史の1ページに触れてまいりました。 山脇東洋觀臓之地 ーーーーーーーー碑文ーーーーーーーーー 近代医学のあけぼの 観臓の記念に 1754年 宝暦4年閏2月7日に 山脇東洋(名は尚徳 1705~1762)は所司代の官許をえて この地で日本最初の人体解屍観臓をおこなった。 江戸の杉田玄白らの観臓に先立つこと17年前であった。 この記録は5年後に『藏志』としてまとめられた。 これが実証的な化学精神を医学にとり入れた成果のはじめで 日本の近代医学がこれから めばえるきっかけとなった東洋の この一業をたたえるとともに 観臓された屈嘉の霊をなぐさめるため ここに碑をたてて記念とする。 1976年3月7日 日本医師会 日本医史学会 日本解剖学会 京都府医師会 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 六角獄舎跡は二条城の南の因幡町にあります。 跡地は集合住宅であり、石碑のみの設置でした。  

相手

  リアルタイム 腹がリアルタイムで変化を表す場所だという事が実感できました。 場所的に当たり前ですが、逆にそこまで臓腑との結びつきが強い場所であれば腹診時は少し怖いものがあります。 気をつけたいと思います。 また、先日学校の授業で神門へ灸を受けたのですが、似たような場所の腹の変化が見られました。 脈も心の原穴にやられたからと言って寸に反応が出る訳ではない現象も見られて勉強になりました。   脈 お腹も変化していましたが、あの時脈はどう変わったのか。 今まで似た体質のお二人を見せて頂いたので、整理して治療のイメージができればなと思います。   労宮 ここでみる様にしていたのですが、この前の当て方はきちんと当たっていないというか、自分が良いなと思っていた時に感じた当て方とズレていました。 手で探る様な仕草に近づいている印象があったので改善します。 また、右手の方が感度が低いので普段から合掌して変化しないかやってみます。   案内 最初に先生に案内の仕方を教わった時、患者さんの歩くペースに合わせる事を教わりました。 意識はしていたのですが、そこの意識が甘い事に気付かされました。 改善します。     鍼灸師 きちんと人を治せる様になるために足りないものが多すぎる。 できていないことだらけですが、頑張って出来る様になりたいと思います。 相手があっての事ですが、最終的には全て自己責任。 変わるも変わらないも崩れないも自分次第。 全部受けとり、向き合い、幅広く合わせられる様に努力します。 また、本に全てを頼る訳ではありませんが、必要性を感じたので論語の勉強もやっていきます。 変わらなければいけないきっかけにまた遭遇できて本当に良かったなと思います。 気を引き締めて頑張ろう!

脈診(06)

引用:『中医診断学ノート』P30 ” 3、正常な脈象 ” 平脈 正常な脈象のことをいう。 脈位は浅くも深くもなく、 脈拍は速くも遅くもなく(一呼吸4〜5ーーー60〜90分)、 ゆったりとおだやかで、しかも力強い。 さらに、脈拍の律動が規則正しい。 有胃・有神・有根 正常な脈象(平脈)の特徴は 有胃・有神・有根の三つに表現される。 有胃 脈位は浅くも深くもなく、 脈拍は速くも遅くもなく、規律が正しい。 有神 ゆったりとしていて、しかも力強い。 有根 尺脈を沈取したとき十分に力強い。 そもそも平脈を臨床上で知り得るのはいつなのか? 主訴をもって来られた初診時ではないので、いつ? ”尺脈の沈取で力強い”とするのが、有根とあるが 邪によって強くなることもあるのでは? 人の個性や今まで歩んできた歴史によっても異なり、 ”正常な脈象”の把握って実は難しいように思う。 【参考文献】 『中医診断学ノート』東洋学術出版社
桜

食べることについて①

皆さま、初めまして。 受付をしております、鍼灸学生のイワイです。 ここでは、日々の学習のことやそこで生じた疑問など様々なことについて、学生なりに書いていきます。 どうぞよろしくお願いします。 早速ですが、新年度になりました。 桜が満開で見頃を迎えてますね! 春といえば、「新しいこと」を始めるのに適した季節だというわれています。新しいチャレンジや生活など、楽しみな気持ちと新しいことに取り組む不安もあると思います。 私達の身体は何か取り組むとき必ずエネルギー、気力、体力が必要になります。 そこで、新しいことに向き合うために、日々の生活の中で欠かすことのできない〝食事〟について勉強し、食べることで身体へどういう影響がでるのか、西洋医学と東洋医学での、それぞれの概念について勉強しました。 西洋医学的には、私達が食事した際、口から入った食べ物は 口→食道→胃→小腸→大腸→肛門 という順ではいって、外で便として出て行きます。この過程の中で、体内に栄養素を取り込み、身体に必要な物資に再合成し、吸収されています。 では、東洋医学的にはどういう概念でしょうか? 東洋医学的に考えると、まず人体の構成や生命活動を維持するのに最も基本的な物資のことを〝精〟といいます。 この〝精〟には、父母から受け継いだ〝先天の精〟と飲食物を摂取することにより得られる〝後天の精〟の2つから成り立ちます。先天の精の量は生まれたときから決まっていますが、後天の精は飲食物を摂取することで絶えず補充されています。 次回は、後天の精について勉強したことを書いていきたいと思います。 ————————————————————— 【参考文献】 「生理学 第3版 」東洋療法学校協会 編 「新版 東洋医学概論」東洋療法学校協会 編
苔を育成中

胖大にて白苔の舌を観察します。

【舌診(09)】 こんにちは稲垣です。 患者さんのHさんに舌の研究の為にご協力頂きました。 学術の為にご協力頂き感謝いたします! 《令和3年1月22日》 表は白苔が強く水泛しているように思います。 嫰であり、胖大。 湿に覆われているように思います。 表と裏の違いが謙虚。 舌下静脈が中央に近い形でストレートに伸びている。   《令和3年1月27日》 表は全苔より苔の剥離が診られ、 溢れていた水が引き始めているように思います。 胖大はやや狭まりつつあるように思いますが、 22日よりも白苔は強く感じます。 裏は舌下静脈の形は変わりませんが、色が薄くなっています。 舌裏全体の色が淡くなっていますが、 左前に舌瘡のようなものが出来ています。   《令和3年1月30日》 苔全体が薄くなっているのが顕著。 剥離され舌体がみえるところと苔との境目が緩やか。 全体的に赤みを帯びてきたように感じます。 全体的に水が引いた状態と共に 歯痕も少なくなってきたように思います。 舌裏の色合いがかなり薄くなってきており、 舌下静脈も姿が薄くなってきたように思います。   苔が少なくなる経過には、 一時的に苔が強くみえる現象があるのかもしれないと感じました。 これは苔だけの現象ではないのかもしない、と感じております。 来院と来院の間に何があったのか、 舌の情報だけでは足りないところです。 皮膚の肌荒れも、おさまりつつあるように感じています。

舌診(01)

舌の研究 修行生のSさんと勉強をします。 「左腕の外転について難あり。」との主訴により 刺鍼を行いました。 〈前〉 〈後〉 上逆し易い体質と考え、 上がらない重しをしっかりとさせる事を 長期的な目標としております。 主訴を受け、 気血の巡りをよくしたいと思い その阻害要因が中焦より下焦へと続く 舌の苔に診られる通りの邪熱かと考えます。 刺鍼後、 左腕の外転にやや改善が診られた事で好転反応はあり。 舌苔が面積も厚さも少なくなってる事、 舌体より気虚症状の減少が診られる事などから ある程度の効果があったのかと推測されます。 経過を観察をしていきます。  

湿が熱化することについての疑問点

湿熱証は湿と熱が合わさった状態で人体に入り、病になっている。 湿や熱が蘊結(こもって停滞する)、薫蒸(いぶすこと)して起こる。 湿も熱も気の1つ(?)で口鼻から人体へ侵入する。 前回のブログを書いた時には皮毛から湿邪が侵入するという風に書いてあるのを読みましたが、口鼻から侵入する湿、熱と、湿邪は別物なのか? 湿邪が体内でこもって停滞し熱が生まれることと、脾胃の湿から熱が生じるというのは、 前者は外からの要因によるもの、後者が内からの要因によるもの、という認識でいいのか。それともどちらも体内で起こっていることで、単純に湿→停滞→湿を解消するために熱化する、ということなのか。 熱化することで、体内に分散させて湿をなくそうとしている、ということなのか。 (でも熱化することで、津液が少なくなる、臓腑の機能が失調する、などの問題も生じれば、熱化は身体にとっては良くないことになってしまうような気も・・・) 湿熱証の性質は「湿」ではなく「熱」という記載もあり、2つが合わさっているのに性質が熱というのは、熱の方が湿より強い、ということなのか? 確かに湿のことだけを考えていると湿が強くなることで熱化し、熱が発生してから熱が弱から強に変化していくようなイメージになってしまって湿と熱を同列にしているとやはり変な感じもあります。 【memo】 ・〇湿が熱化→湿熱に転じる ・脾胃だけで熱化を考える ・熱の影響