学生・研究生によるブログ

学生・研究生による学びと発見のブログです。

病因について(1)

人が病を持つに至る過程について考えたいと思います。 健康な状態からどの様に悪化していき病に至るのか? いわゆる病因について・・ ---病因の分類--- 〇三因方(三因極一病源論粋) ・外因     六淫、疫癘 ・内因     七情 ・不内外因   飲食不節、労逸、房事過多、外傷 〇現在 ・外感病因   六淫、疫癘 ・内傷病因   七情、飲食不節、労逸、房事過多 ・病理産物その他の病因  淡湿、瘀血、内生五邪、外傷 現実の病因については複合的に絡みあい、時間軸も重ねれば、 外因、内因など複数の要因が影響し合っているように思います。 病証から考えれば、キッチリと分ける事は出来無いのかもしれません。 人は思っているより強く、我慢や対処を常にされているのだと思います。 そして、悩みを持つに至るのかと・・ そこで、気になったのですが親からの影響は無いのか? 『素問 奇病論篇第四十七』 帝曰.人生而有病巓疾者.病名曰何.安所得之. 岐伯曰. 病名爲胎病. 此得之在母腹中時.其毋有所大驚.氣上而不下.精氣并居.故令子發爲巓疾也. 人、生まれながらにして巓疾(てんかん)を病む者あり、病名を何と言うか? いずこの所に之を得たるか? 病名は胎病となす。 此れ之を母の腹中に在りし時に得たるなり。 その母大いに驚く所ありて、気上がって下がらず、精気屏居(集中)す。 故に子をして発して巓疾とならしむ。 病因についての理解を時間軸で考えた場合に、今までより以上に長軸で考える必要がありそうです。 参考文献 『素問』明・顧従徳本 『図説 東洋医学〈基礎編〉』学習研究社 『新版 東洋医学概論』医道の日本社 稲垣英伸

膩苔が強い舌を観察します。

こんにちは稲垣です。 舌診について研究を重ねてまいります。 【前】 舌体は紫舌で、 舌尖から舌辺にかけての歯痕の部分に 赤みが強く感じらます。 舌尖に点刺が多く、舌尖より舌根にかけての 中央部分に黄膩苔が強い。 潤いが少ないように思います。 舌裏に関しては舌下静脈がハッキリと見え、 両側が暗く血の滞りを感じます。 【後】 今回は、刺鍼中もコミュニケーションをとりながらでしたので、 ゆっくりと休んで頂く形ではありませんでした。 舌面に関しては、変化は少ないですが 舌尖あたりの苔が少し引いて 舌体の色が見やすくなったように感じます。 舌裏の色調が明るくなったように感じるのと 両側の暗さが少し明るくなっていうように思います。   舌面の黄苔や潤いの少なさより 熱が強く津が焼かれているように感じます。 その熱の所在が重要に思いますが、 舌尖の点刺との共通点が気になります。 以前より練習として診させて頂いており ひどい時は紫舌と膩苔が極めて強くなります。 化火をどのように抑えるのかが課題と思いますが、 舌裏からみえる瘀血が下焦を滞らせ、 気機を上昇させてる要因と考えております。 熱化させずに自身でセーブできる力を持つ事 を長期的に考えて施療を行っております。 経過を観察していきます。

八綱弁証

学校で中医学の基礎として教わり、 それからは、考察を立てるうえでの 基礎においてきた。 ただしこれまで、そこに 何故その方法を用いているのか、 そうした視点がまったく抜け落ちていたことを 気付かされた。-蝶番- 一緒に学ぶ者が、 同じポイントで先生の言葉にうなづいている、 そんな空間が無性に嬉しく感じられた。 これもひとつの小さな発見だと思った。

中国の思想(08)

老子 六十三章 聖人は大をなさず 為無為、事無事、味無味。 大小多少、報怨以徳。 図難於其易、為大於其細。 天下難事必作於易、天下大事必作於細。 是以聖人終不為大。 故能成其大。 夫軽諾必寡信、多易必多難。 是以聖人猶難之。 故終無難矣。 無為をなし、無事を事とし、無味を味わう。 小を大とし少を多とし、怨みに報ゆるに徳をもってす。 難きをその易きに図り、大をその細になす。 天下の難事は必ず易きより作り、天下の大事は必ず細より作る。 ここをもって聖人はついに大をなさず。 故によくその大を成す。 それ軽諾は必ず信寡く、易きこと多ければ必ず難きこと多し。 ここをもって聖人すらなおこれを難しとす。 故についに難きことなし。 (引用:『中国の思想[Ⅳ]老子・列子』P101~103) ” 怨みに報ゆるに徳をもってす。” 解説の中には「大戦後の蒋介石による対日政策の基調をこの言葉に置いたのを 民族の総意の表現だったと見られる。」とある。 中国大陸に残留孤児が多かったのを 民族性と連ねる説を読んだことがあり、符合するように思います。 その地域性を感じる事ができたようで、面白く思いました。 そして日々の生活の中で 決して偉そうにしない”立場ある人”と出会う度に、 丁寧に一つ一つを対応される姿をみて感心することがあります。 この延長線上に大事ができるのだろうな、、と思います。 先ずは、小さな事をおろそかにしないように心がけたいと思います。 【参考文献】 『中国の思想[Ⅵ]老子・列子』徳間書店

日常ネタ

先日、薬局に処方箋を持って来られた患者さんのエピソードをひとつ。 (年齢は70歳前後の男性の方だったと思います。)   「市販の風邪薬を飲んでいても全然効かへんから、病院に行ってきたわ〜。」 「薬で胃がやられたんか、胃が膨れた感じになって食欲もなくて、全然食べたいと思わんねん。咳もまだ続いてるしな。まいったなぁ。」 「やっぱりちゃんと、初めから病院で診てもらって薬飲まんなあかんなぁ。」   と言われて、総合感冒剤と咳止めと胃薬をもらって帰られました。   そして7日間後にまた来局されて、また全く同じ内容の処方箋を持って来られました。   「薬全部飲んだんやけど、全然治らへんのや。」 「また同じ薬なんか?、先生にいろいろ言うたんやけどな。これしかないみたいやわ。」 そこで、改めて今どんな状態なのか伺ったところ。 一番は胸脇部が苦しい。 上腹部が張って苦しいので、食欲がない。 咳が続く。 咳をすると頭痛というわけではないけど、頭の表面がピリピリと痛む。 と言われていました。   全然一週間前と症状が変わっていない様子。 これがもっとも西洋医学の苦手な部分ですよね。と思わず思ってしまいました。 万人に対しての通り一遍の大雑把な処方しかない。 東洋医学的なアプローチなら、もっと的確にケアできるシチュエーションなのだろうなぁと、その患者さんの背中を見送りながら思った場面でした。

腹をうかがうにあたって

腹診を学ぶにあたって理解があやふやな用語をまとめてみました。 心下痞(しんかひ)=心下痞満(しんかひまん) 心下とは胃脘部を指す。胃脘部に気機の阻滞によって痞えたような不快がある。患部に疼痛はなく押さえると軟らかい。 心下痞硬(しんかひこう)=心下痞鞭(しんかひこう) 硬と鞭は同意語。気機の阻滞により胃脘部に痞えたような不快感があり、患部を押さえると硬く抵抗感がある。また心下痞硬の一種として心下部が菱形状に抵抗が強い心下痞堅がある。 どうやら心下痞は自覚症状のみですが、痞硬の方は他覚的に抵抗があって場合によっては疼痛もある感じです。 心下支結(しんかしけつ) 胃脘部が詰まったような不快な煩悶感がある。 少腹急結(しょうふくきゅうけつ) 左の前上骨棘と臍を結んだちょうど真ん中あたりに索状物を触れ、押したり按じると響くように痛むもの。瘀血の症の一つ。 小腹腫痞(しょうふくしゅひ) 右の腰骨と臍を結んだ線の上から3分の1あたり、回腸部付近にしこりや圧痛があるもの。瘀血の症の一つ。 一語でわかる中医用語辞典(源草社) はじめての漢方診療十五話(医学書院)  

閃めく経絡

以前から気になっていた本を読んでます。図書館で借りれました。 「閃めく経絡」ダニエル・キーオン著 私は今まで東洋医学について記した本で、西洋人が書いた本を読んだことがありませんでした。振り返れば、ほぼ日本人か中国人で、韓国人は1人か2人くらいでしょうか。なのでとても珍しく感じました。ちなみにこの本はアマゾンでも好評価です。 著者はどんな人なのかと見てみたところ、救急診療専門医のイギリス人で、中国に留学して鍼灸を学ばれていたようです。 なので、もともと現代医学に明るく、特に発生学が得意なのか、その知識の上で鍼灸を学ばれて感じたことを掘り下げ、分析して想像した内容になっているのかなぁという印象を受けました。 著者は、「発生学からの知識に数学を取り入れて、鍼灸がどのように作用するか理解するようになる方程式を作り上げる。それは無限に複雑で美しい形であると同時に洗練された単純性を表したものになる。」ということを記しています。 今まで東洋的な言い回しに慣れてきた私には、いかにも西洋的な文面だなと感じざるおえませんが、このような考え方で西洋医学はここまで発展してきたのだろうとも思います。 まだ、この本を半分くらいしか読んでいませんが、著者は「気」とは何か、なぜ「経絡」がこのような配置になっているのかを、人体がどのように発生し、どのように作用しているのかを理解すれば明らかになると考え、発生学の見地から答えを見出そうとしています。 この後の展開が楽しみです。   近年、西洋圏でも東洋医学が盛んに学ばれ、人気があると聞いています。そうなることで、この著者のような人も増えてきて、今までになかったいろんな切り口で考えられるようになり、東洋医学もより発展していくかもしれません。そしてそうなればいいなとも思います。

何気ないひと言

先日、久しぶりに寺子屋の実技練習に参加しました。 先生が何気なく仰った一言や、行動に、 ぼんやりと、悶々としていた事、 見落としていた!と気づいた事。 ちょっと視野が拡った感じで ワクワクします。 1年前、数ヶ月前、数日前なら 先生の言葉がよく分からなかったかもしれません。 日々臨床に出て、疑問に思ったことがなければ、 今日得た気付きはなかったかもしれません。 些細なことでも 次から現場で活かそう! 勉強会や実技練習に参加すると、 モチベーションに繋がります。 分からない事、できない事を嘆くより、 それも楽しんでいけるくらい 肩の力を抜いていて歩んで行こうと思います。

五行大義(2)

曲直 洪範傳曰、木曰曲直者東方。 易云、地上之木爲觀。 言春時出地之木、無不曲直、花葉可觀。 如人威儀容貌也。 許愼云、地上之可觀者、莫過於木。 故相字目傍木也。 古之王者、登稿輿有鸞和之節、降車有佩玉之度、 田狩有三驅之制、飲餞有獻酢之禮。 無事不巡幸、無奪民時、以春農之始也。 無貧欲姦謀所以順木氣。 木氣順、則如其性、茂盛敷實、以爲民用。 直者中繩、曲者中鉤。 若人君失威儀、酖酒淫縦、重徭厚税、 田獵無度、則木失其性、春不滋長、不爲民用、橋梁不従其繩墨。 故曰木不曲直也。 洪範伝に曰く、木に曲直というは東方。 易にいう、地上の木を観となす。 言うこころは、春時、地に出づるの木は、曲直ならざるなし、花葉観るべし。 人の威儀容貌のごときなり。 許慎いう、地上の観るべき者は、気に過ぐるはなし。 故に相の字は、目、木の傍らにするなりと。 古の王者は、輿に登るに鸞和の節あり、車を降りるに佩玉の度あり、 田狩に三駆の制あり、飲餞に獻酢の礼あり。 事なきときは巡幸せず、民の時を奪ふなし。 春は農の始めなるを以てなり。 貪欲姦謀なきは、木気に順う所以なり。 木気順なれば、則ちその性のごとく、茂盛敷実し、以て民の用をなす。 直なる者は縄に中り、曲なる者は鉤に中る。 若し人君、威儀を失い、酒に酖りて淫縦し、徭を重くし税を厚くし、 田獵度なければ、則ち木は、その性を失い、春滋長せず、民の用をなさず。 橋梁は、その縄墨に従わず。 故に木に曲直せずというなり。 【引用文献】 『五行大義』著者:中村璋八、発行:明德出版社

舌の考察 2023/11/22

最近は舌の考察を寺子屋生どうして写真をとってみたりして行なっています。 今までこんなにじっくり舌を観察する機会がなかったので、やはり勉強になるなと改めて思っています。 自習の方では難経鉄鑑の34難まで進みました。 以前読んだ時は33難が難しくて、一体何のことを言っているのかチンプンカンプンでしたが、今回改めて読み返してみると何となく全体像を理解できたような感じになり、繰り返し読み返す意味を再確認することができました。 舌質 胖大 やや淡白より。 厚みがあって、パンと張った気が充実している舌で、気滞があるのかなと思われる。 しかし舌尖の赤味が他の2人とは違ってみられない。 舌苔も薄く消化管も問題なさそうに見える。 舌の張り感がなく、だらんとした気が抜けた舌。 舌苔は粘稠で厚みがあり、低速モードで消化管の働きが追いついてない。中焦、下焦に停滞している。 備考:生理が終わって、口周りの吹き出物の活動が治ったように思う。 上の2人に比べると、舌の色が暗く、鮮やかさに欠ける印象をもつ。 舌の弾力性も以前の写真に比べると低下している雰囲気がして、気虚が増したように感じる。 舌裏も白抜け感があり、まだらで血の停滞が見られる。