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東洋医学・鍼灸医学の研究用ブログです。

海遊館のジンベイザメを間近に見る

【用語集】心血瘀阻

心血瘀阻 さまざまな要因により 心脈が詰まり気血が通じなくなる状態を指す。 主な要因として、 心気虚(しんききょ:心気が不足し、血脈や精神を主宰する機能に影響が出る)や、 心陽虚(しんようきょ:心気虚が進行しておこることや、重い病などで陽気が損傷することがあり、心気虚の症状の他に寒がる・四肢の冷えなどの症状が現れる)により、 心血も同時に不足することで、心脈が養われなくなること。 また、 ストレスや過労、寒邪、痰湿などが原因となり、 瘀血が形成され心脈の流れを阻(はば)むことがあげられる。 陽気と陰血は互いに影響しあっているため、 陽気が虚していくと、 血の循環が妨げられ、その結果、血が心脈を瘀阻(おそ:主に血が停滞し、流れを阻むこと)する。 そのことがさらに心陽不振(しんようふしん:心陽が不足すると、血脈を温め通りをよくすることが出来なくなり、痰湿や瘀血が心脈を塞ぎやすくなってしまう)を進ませる。 その逆もまたしかりである。 主な症状として、 心陽が鬱滞(うったい:流れが滞っている状態)すると、 陽気が四肢末端まで行きわたらず、 動悸・怔忡(せいちゅう:心臓が激しく動悸する症状)の他に手足の厥冷などがおき、 心脈が瘀滞して通じなくなると、 唇や爪が青紫色になる・狭心痛・胸から背中にかけて痛みなどの症状がおこる。 参考文献: 『黄帝内経素問』 『黄帝内経霊枢』 『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社 『基礎中医学』 神戸中医学研究会 『中国医学辞典』 たにぐち書店 『臓腑経絡学』 アルテミシア 『鍼灸医学事典』 医道の日本社
切脈一葦

切脈一葦 上巻1

こんにちは、大原です。 前回まで、『切脈一葦』の序文を 2回に分けて読んでいきました。 前回の記事 (切脈一葦 序文2) 今回から、上巻を読んでいきます。 切脈一葦 巻の上 常陽 中茎謙 著 脈位 寸口の脈は、顕然として見(あらわ)る処なり。 故に上古より今に至る迄、 動脈の流行をここに診して。 血気の盛衰をうかがうこと何の時より始めと云うことを。 明らかにせずといえども、古書に脈を論ずるときは、 必ず寸口を主とするを以て考えるときは 上古の脈位なるこを疑いなし。 寸尺は、人の体より出(いで)たる者にて、説文に、 「周制の寸尺(すんしゃく)咫(し)尋常の諸度量は、皆人体をもって法と為す」と。 の語あり。 家語に、 「指を布(し)き寸を知る。 手を布(し)き尺を知る。 肘を舒(の)ばし尋(ひろ)を知る、の語あり」。 素問に、 「尺内の両傍はすなわち季肋なり」の語あり。 また、寸尺按じるの語あり。 霊枢に、「尺を調う」の語あり。 これらの語を合わせて考えるときは、人の体を指して尺と称すること、見るべし。 尺は度量の統名なるをもってなり。 調尺の尺は広く人身を指し、 尺内の尺は腹を指す。なお腹内というが如し。 尺寸の尺は手を指す。 寸に対するをもってなり。 寸口は尺を診するところなるをもって名づけ、 尺沢は尺より寸に、血脈の流行する処をもって名づけたる者なり。 動脈の見る処多しといえども、 その著名なる者は、寸口を第一とす。 人迎趺陽は、これに次ぐ者なり。 人迎は常に寸口より大く、 趺陽は、常に寸口より小なる者は、脈道に本末あるをもってなり。 これ仲景氏の寸口人迎趺陽をもって三部と為すといえども その大ならず。 小ならざる所の寸口を主として、人迎趺陽を参考に備えるゆえんなり。 虛里少陰膻中も、また其の著名なる者なり。 故にその証によって、参考に備えることあり。 寸口は手の掌の後、高骨の側に見る動脈なり。 人迎は、結喉の両傍に見る動脈なり。 結喉は喉嚨なり。頤(あご)の下に高く尖りたる骨をいう。 趺陽は趺の上に見る動脈なり。足の跗の上、大指と次指との両骨の間を上へ去ること五寸、 動脈手に応ずる所なり。 虛里は左の乳下に見る動脈なり。 少陰は足の内踝の後ろ、陥なる中に見る動脈にして、 いわゆる少陰の道、是なり。 臍中はいわゆる腎間の動、是なり。 (続く) 参考文献 『切脈一葦』(京都大学附属図書館所蔵) 画像は京都大学デジタルアーカイブより

院長の治療を受けて(平成30年12月)

院長の治療を受けております。 【主訴】 背中の痛み(肩甲骨内側と下部周辺の張痛)と 慢性腰痛(痛みは軽微で動作開始時痛)。 出来るだけ、些細な変化も記憶に留めておきたいと思い、身体の全体を観察します。 治療に関しての全てが”学び”です。 問診での着目するポイント、 舌など望診における情報をキャッチする速さ、 繊細でありながら落ち着いている切診の感覚。 そして、治療。 背中の痛み関しては即座に無くなります。 腰部の痛みについては、 朝の起きる際やソファーに長時間座った後などのスターティングペインなので、 この時には変化は分らなかったですが、効果は翌朝に十分感じ取れました。 伝えはしたものの、後回しでも良いと考えていた膝の痛みも同時に無くなります。 結果、 嘘のように無くなっています。 鍼を受けて寝ている際に、身体に集中すると 手指の末端がピクピクし、腹部も微妙に内部が動くのを感じます。 刺鍼と、この感覚。結果を思うと、 身体を巡る気血や臓腑からの学術と臨床の関係を感じるに十分です。 日頃学ぶ東洋医学の論理を目の当たりに体感できた素晴らしい時間です。 『開業以来、鍼一本。』 この”鍼一本”の可能性の楽しさを見せて頂いたように思います。  

脾胃湿熱の「湿熱」について

東洋医学概論の教科書にあった脾胃湿熱でしたが、湿熱とは 食べ過ぎ・飲みすぎが原因で体内に入ったままになっている「水」が 熱の影響で湿気?のようになっているものなのか? ヒントを探して中医弁証学を読んでみましたが、今日はハテナが多いです。 湿は重濁性と粘滞性をもっていて、湿邪による病は長引きやすく、進行が緩慢 粘滞性があるために長引きやすいような感じがしますが、 病の進行が緩慢というのはいいことなんでしょうか? それともわかりにくい?ということなのでしょうか。。 気機を阻滞させやすく清陽(?)に影響しやすい。 湿気の多い環境や居住地の場合、湿邪は外から皮毛に入る。 また、脾胃虚弱や水分の取りすぎ、過食などは湿の内生をまねく。 湿の病は内外の湿が合わさって発生することが多い。 私自身が雨の多い土地で生まれましたが、どれくらいの期間その環境で過ごすか、というのも関係があるのでしょうか。 (それによって湿邪に対して耐性ができるみたいなことはあるのか?そもそも邪に対して耐性ってなんだろう…) (大阪は日本の中でも湿度が高い土地柄から、梅雨の時期になると湿邪による症状が起きやすい、と授業の時に聞いたことがあり、根拠を調べてみましたが思うような答えは出てきませんでした…)
苔を育成中

胖嫰舌の表裏から考察します。

  舌質・舌苔 淡白舌・嫰・胖大・歯痕・点刺 薄白苔が全体的にありますが、 舌根には白膩があるようにみえます。 舌裏 舌下静脈に怒張・蛇行はみられずに ぼんやりとしています。 外側には暗いところがみられます。 舌面の中央が凹んでいるのが特徴的と思いました。 胖嫰舌のうえに、舌を出すのに力がない為に 凹んでいるのだろうと考えています。 口の開け方にも力強さを感じません。 舌に赤みが少なく、 全身に栄養が行き届いているのか?と心配されます。 舌裏に暗いところがあり、滞りも感じます。 全体的にのっぺりしておりしているのが印象的で 気・血ともに、か細く感じております。 仮説として 裏に虚があり血の停滞がおこり、その表現として舌裏に 血の滞りがあらわれているように思います。 そこが原因となって水分が均等に末端まで届かずに 舌全体に溢れているのでは?と考えます。 原因は同じくして気の停滞もおこり、 力強さを得ることが出来ていないと考えます。 この湿が下焦に累積されていかないかと危惧されます。 舌のみで、想定を考えてみました。 今後も考察を深めたいと思います。  

はじめました

初めて投稿します。北山です。よろしくお願いいたします。お正月、実家でひたすら食べ物が出現する状況でしたので、飲食について調べてみました。 飲食物の摂取については、適量を維持することが最も重要であり、食べ過ぎたり(過飽)、食べる量が十分でない状態(過飢)はどちらも脾胃の機能を損傷させる、とありました。 バランス良く食べる事は大切ですし、食べ過ぎてしまうことが身体に良くないことはなんとなく体感としてわかるように思います。しかし身体は食物を摂取することで気血を生成するため、当然適切な量を食べないと気血は衰弱、減少する。気血が減少すれば正気が不足し、外邪の侵入を防げなくなってしまう。考えたら当たり前なのかもしれませんが、食べないことによるダメージは実感としてわかりにくいため(個人差?病のような状態になるまで時間がかかるから?でしょうか?)、食べ過ぎることと、食べなさ過ぎることが同じくらい脾胃にダメージを与えてしまうとは思っていなかったので驚きました。もう少し調べてみたいと思います。 【memo】 脾胃: 飲食物の栄養を運搬吸収する主要な器官 五味: 酸苦辛甘咸、食物成分、飲食物の総称 「五味口に入りて、もって五気を養う」(素問  六節臓象論篇)  

真夜中のドン

昨日の事。 寝る前に鍼の事を考えて就寝。 夜中に目が覚める。 うつらうつらしてる。   ふと足を切経する。 寝る前も気になっていたが、薄暗くこの様な状況だと顕著。 明らかに形態もおかしく崩れていて、奥行きを感じる。 ここに置きたいと感じた。   幸い枕元に鍼を置いていたので一連の流れは崩れずに済んだ。   置く直前に東洋医学考で読んだ四肢の経穴を使う時の刺法が浮かんだ。 暗いので鍼先なども見えないけど、刺法だけ注意して後は何となく感覚で照海に置く。   ドンっといった重低音に近い感覚があった。   後の反応を追う前から分かる良い感覚。 しばらくするとこの前教えて頂いた2箇所に変化が現れる。 自分に対してだと今までで一番良い鍼ができた気がして嬉しくなった。   六味丸を使った感覚と少し似てる。   参考資料 東洋医学考 星雲社 一鍼堂出版 

胞宮

髄海と同じく、奇恒の腑である胞宮について。 ーーーーーーーーーーー 女子胞は通常子宮のことを指すが、機能的には卵巣や輸卵管を含めた生殖器全体を統括するものと考えられ、胞宮・子宮・血室とも呼ばれる。 心・肝・脾・腎および衝脈(十二経脈の血が集まるところで十二経の海・血海と称される)・任脈・督脈と関連し、月経・妊娠・出産に関与する。 衝脈・任脈・督脈ともに胞中より起こる。 〈月経〉 月経は衝脈を通じて胞宮から出る血液であり、天癸の働きにより衝脈が盛んになり、心の推動と肝の疎泄によって暢行になった血が下泄して月経が来潮し、脾の統血によって月経が停止するので、定期的な月経になる。 健康な場合は、血の量も十分であるため症候として現れないが、血虚や気血両虚の場合、症状の出現や憎悪が起こる場合がある。 また、肝の疎泄は、衝脈・任脈に流れる血を女子胞に送り出す役割を担っているため、月経が近付くと疎泄が変動しやすい状態となる。肝鬱気滞や肝陽上亢の場合、頭痛・急躁・不安感・乳房の脹痛・眩暈などの症状が出現または憎悪しやすくなる。 また、精の不足や腎陽の虚損、脾気の虚損によっても、月経異常が起こる。 〈妊娠〉 女子胞は、懐妊後は胎児を保護し発育させる。 胎児が女子胞の中にいる間の栄養供給は、衝脈・任脈によって行われる。 妊娠の有無に関わらず、女子胞の機能維持には肝・腎の機能が正常であることが必要であり、肝・腎に何らかの機能失調が起こると、不妊症となる場合がある。また、肝・腎の機能失調により精血が不足すると、衝脈・任脈の機能が低下し、女子胞を滋養・固摂することができなくなり、流産する場合がある。 妊娠時は、胎児に精血を供給しているために、母体は精血の不足が起こりやすい。また、胎児は陽盛であるため、母体も陽に編盛しやすい傾向にある。 出産は、正常分娩であっても少なからず生理物質を消耗するため、正気の不足を招くことが多い。そのため、出産の回数が多い、堕胎の既往がある、出産後の養生が不十分であることなどは、気・血・精の不足が起こり疾病の原因となり得る。 ーーーーーーーーーーー 胞宮=子宮、不妊=腎虚といったような認識しかほぼなかったので...  調べていて合点いくことも多く、面白かったです。 『新版 東洋医学概論』医道の日本 『やさしい中医学』関口善太 『基礎中医学』神戸中医学研究会 西

猛暑

患者さん 前回寺子屋で患者さんのお身体を借りる際、極力相手がそのままの自分でいられる様に、こちらの雰囲気に引っ張らないようにと意識しました。 相手の雰囲気に溶け込んでいくように意識。 先生の患者さんへのワンクッション挟む様な挨拶なども聞いていて参考になります。   映画 映画、サウンドオブメタルを見ました。 色んな視点や主人公の感情変化が上手く描かれたとても良い作品でした。 内容は突発的に聴力を失った人の話です。 失ったことで生じる世間とのギャップ。 その中でどうにか聞こえるように、元の生活に戻れる様にと試行錯誤しますが、どうも幸せにはなれない。 結局最後のシーンでは色んなものが破綻して喪失、見方によっては悲惨なものでしたが、その中でも主人公が帰る場所を見つかって良かったと感じました。 自分の生活でも聞こえる、聞こえない関係なく帰るべき場所は必要だと思います。 バガボンドの「おっさん穴」が思い返される。   訓練 最近溶け込む訓練として色んな人と会う様にしています。 やはり考えている事は違う事がほとんどで、話していてもやはり人間なので違いはある。 でもその人にはその人の物語があるので合わせる訓練にはなる。 その為には尊重が必要。 昔この先生の考え方好きだな〜と思った人がいて、大体の内容として 「みんな何かしらの夢を見てるんだからその夢に付き合うのも優しさ」 と仰っていた。 優しさというと少し誤解を受けそうなニュアンスに聞こえますが、仰っている意味はわかる。 主観はそれぞれ違う。 相手の物語に寄り添って初めて答えてくれるものなんだと感じています。 きちんと相手を大切にしなければいけない。   ルーティーン 最近は一鍼堂に行く前に難波神社で拝礼してから向かう様にしています。 何を願う訳でもないのですが、そこからが入りやすいので気に入っています。   猛暑 この時期暑くなり、水分摂取が多くなる。 そういった人の話を最近よく聞く。   同じ条件を作ってみるために、自分も長時間運動時して普段よりも水を大量に飲むようにしてみた。 現れた症状は口渇は病まず、胃部の不快感と倦怠感。   先々週みさせて頂いた患者さんも陽明のある部分に熱を持っていたことが思い返される。   激しい運動時、胃にも熱が生まれ、口渇が起こる。 その熱をさまそうと冷たいものを欲する。 胃熱を覚ます意味では一定の冷たいものは正解だと思う。 しかし多くは冷たい水やスポーツドリンクなどをチョイスし、そこに水分も多くなる。 脾が対処できなくなり、湿を溜め込む。   ここで熱+湿という条件が揃った舌を見てみる。   面白いことに表面に泡が貼っていた。 自身の体質的に酒を飲んだ時に出るこの泡。   熱と湿が中焦で発生した時に生まれるもの?   最近モデル患者さんで確認されるお腹の状態にも近づいた。   水分を摂取しすぎることなく、どうにかして胃熱への対処を行う事が必要か。 そういえば西瓜が昔からこう言った時に使われていて、天然の白虎湯とも呼ばれている事を思い出した。   瓜科の植物は熱を覚ましつつ利尿するものが多いのでこの時期は重宝しそうです。   他に自分の体の現象として勉強になった事が尿量の減少。 そこで気になった事が、果たしてよくトイレに行く患者さんが本当に利尿しているか?という疑問。   水をたくさん飲むから出さなきゃと思ってトイレに行くとしても、もしかしたら少量しか出ていないかもしれない。   相手の行動の色眼鏡を抜く訓練にもなり良かったです。   そう思うとその人の行動が自分の思っている通りの状態でない事も考えられるので、四診と結びつかない情報に意味がないと改めて実感しました。

京都薬用植物園の呉茱萸(ごしゅゆ)

武田薬品工業(株)の京都薬用植物園で、年に4回行われている研修会があります。 今回は『晩秋の研修会』との事。 一般向けの研修会で、特に専門的な講義が行われるというものでは無いのですが、実体験もさせて貰えるのを楽しみに参加しています。 私は2回目の参加となります。 今回は漢方処方園、樹木園、温室を回りました。 「味見してみますか?」のコーナーでは呉茱萸(ごしゅゆ)を頂きます。 物凄く辛いのをご存知でしょうか?・・辛いです! 呉茱萸 [効能] ◦ 暖肝・散寒止痛 ◦ 下気止嘔  など この辛さを感じると”効能”になんとなく納得が・・ 前回の研修会でも味見をさせて頂きましたが、体験する度に植物のもっている”力”を強く感じます。 漢方薬においては、個々の植物を適切な配分でコーディネートする事で、服用の効果を最大にしているのだろうと考えさせられます。 逆に、個々の主張が強いので、調和をとる材料、飲み易くする材料を共に配合する必要があるのかとも思います。 鍼の調和は切経や刺鍼をする”その時”に、人間の手によって加減できるところなのでしょうか。 薬との違いであったりするように思うのですが、いかがなものでしょう? 薬草のあまりの刺激の強さに色んな事を考えてしまう『晩秋の研修会』でした。 【参考文献】 ・中医臨床のための中薬学(東洋学術出版社)