学生・研究生によるブログ

学生・研究生による学びと発見のブログです。

下巨虚

前回の続きです。   合穴である下巨虚について調べていきます。   《現代語訳 黄帝内経霊枢 上巻》P108 邪気蔵府病形篇 「小腸の病の症状は、下腹部が痛み、腰や背骨が引きつり睾丸まで痛み、大小便がつまり苦しみ、耳の前が発熱し、或いは寒が甚だしく、或いは肩の上の熱がひどく、手の小指と薬指の間が熱く、或いは絡脈がおちくぼみます。これらはみな小腸の病です。 手の太陽小腸経の病は、胃経の下巨虚に取って治療します。」   ↑の文章を基に考えていきます。   《現代語訳 黄帝内経霊枢 上巻》P507 張論篇 「小腸張の症状は、下腹部が張り、腰にかけて痛みます。」   → ・下腹部は小腸のある部位なのでそこが痛み、それが腰まで影響している。 ・耳の前、肩の上は小腸経上にあるのでそこに反映されているのだと思います。 ・手の小指と薬指の間に関しては、小指あたりに経の走行がありますがそれを指すかはわかりません。   《現代語訳 黄帝内経素問 上巻》P164 霊蘭秘典論篇 「小腸はすでに胃で消化された食物を受け取り、食物の精華を抽出して、全身に輸送します。」 《全訳 中医基礎理論》P131 「張介賓は『素問 霊蘭秘典篇』を「小腸は胃の下に位置し、胃中の水穀を受盛して清濁を分ける。そこで水液は前部に吸収され、糟粕は後ろに送られる。脾気は化して上昇し、小腸の気は化して下降する。そのため化物が出るというなり」と注釈している。」   《中医学ってなんだろう》P239 「小腸の蔵象 内部の状態 小腸が清濁を分けられなくなり、余計な水分が大便に混入する。または濁ったものが尿に混入する。 →現象 ・大便が緩い ・下痢 ・尿がにごる など。 内部の状態 小腸から、水分がきちんと吸収されない。 →現象 ・尿の量が減る 内部の状態 小腸の働きが悪くなり、濁ったものが下へ送られなくなる。 →現象 ・お腹が張る ・腹痛 ・嘔吐 ・便秘 など。」   《穴性学ハンドブック》P159 「下巨虚 湿 分清濁、祛湿邪、燥湿、滲湿」   《全訳 経絡学》P 52 「李東垣は張元素に学んだが、その著書である『薬類法象』で、昇降や浮沈により薬性を論じて、茯苓は手の太陽(小腸)へ入り、麻黄は手の太陰(肺)へ入るとし、それぞれの経脈に導く引経薬、報使薬、向導薬を打ち出している。」   →胃からドロドロになって降りてきたものを小腸が受け取る。 受け取ったものを清・濁に小腸が分別する。 清は水穀の精微で、脾の運化へ 濁は大腸へ送られる 小腸の働きが悪いと分別ができず、そこに留まる。 すると下へ送ることができないので留まり、張って痛む。 穴性学ハンドブックで分清濁とある様に、下巨虚によって小腸の働きが改善すると清は脾、濁は大腸へと送られていく。 結果として小腸の張りなども改善される。 また、祛湿邪 滲湿とある様に利水滲湿薬で小腸に入る茯苓の様な一面もあるかもしれない。 邪気蔵府病形篇の寒熱の現象がなぜ起こるのかがもっと調べていく必要があると思います。   参考資料 《現代語訳 黄帝内経素問上巻》 東洋学術出版社 南京中医学院編 《現代語訳 黄帝内経霊枢上巻》 東洋学術出版社 南京中医学院編 《中医学ってなんだろう》    東洋学術出版社 小金井信宏著 《全訳 中医基礎理論》     たにぐち書店  印合河主編 《全訳 経絡学》        たにぐち書店  李鼎主編 《穴性学ハンドブック》     たにぐち書店  伴尚志編著

京都薬用植物園の麻黄

先日、武田薬品工業(株)京都薬用植物園の『初秋の研修会』に行ってまいりました。 東洋医学の理解の為に、漢方の勉強の一環です。 ガイドの案内で植物園を一周します。 管理する研究員の方々は展示に趣向を凝らしていました。 「麻黄は砂漠に生息しているので、砂漠を模したスペースを造園中です」との事。。 『中薬学』などで、麻黄の効能(辛温解表薬・・)などについて書物の中を散策する事はありましたが、その植物の生息環境を考える事はありませんでした。 その気づきを頂いただけでも行った甲斐はあったように思います。 実際には麻黄の種類も豊富で砂漠のみの生息ではないようですが、基本的には乾燥した地域に生息するようです。 ”乾燥した地域に生息し、解表薬となる” この自然環境が導き出した答えに、探求心が沸き起こります。 水の上限で潤いの必要な華蓋に対して、効能のある植物が乾燥した地域に生息し、成分を蓄える・・ 私は中国で砂漠となると、思いつくのがタクラマカン砂漠でした。ゴビ砂漠もあり、砂漠は実際には複数存在します。 解表、皮毛、肺、砂漠・・西?、金の相生⇒水 『五行大義』 金居少陰之位。西方成物之所。物成則凝強。少陰則清冷。故金以強冷為體、従革為性。 現在は『五行大義』をよく読みますが、面白いルールが隠れていうように思えて仕方がありません。 【参考文献】 中薬学(東洋学術出版社) 方剤学(東洋学術出版社) 五行大義(明德出版社)

弦脉

弦脉 瀕湖脉学では 「主病:肝胆病、痛病、痰飲等」 よく見ていくと 「虛勞内傷・中焦の気不足・肝病の脾に乗じた病証等でも弦脉が見られる。 …もし弦で、細く、刀の刃に添うようにきつい感じのする弦脉が出現するなら、胃気のまったくない脈なのでその病は難治と心得なければならない」 と記載あり。 中医臨床のための舌診と脈診 「動脈硬化の老人などにみられる弦で硬い脈は、胃気が低下していることを示す。」 こちららでは硬いと表現。 二つあれば大体の感じは伝わる。   少し東洋医学からは逸れるが、動脈硬化について調べる。   病的な分類としては ①粥状硬化 ②細動脈硬化 ③メンケベルグ型動脈硬化 もしくは加齢による生理的変化。 コレステロールによる粥状硬化、AGEsによって修復されたコラーゲンの問題などにより硬くなったり色々。 慢性的な痛みによる脈管の緊張も考えられる。 勉強不足なので断定を避ける。   実際の症例を見ていくと重症患者には弦脉が現れている。 相剋。   邪気 実の反応ばかり邪気と言われるけども虚も邪。      
20210617

鍼治療を受けて⑤

刺激というとき、まず物理的な接触(による操作)を想起する。 力、力量、力の方向を連想する。 学校の授業で取り扱われたのは専らこちらで 刺激量の調節が大事とされた。(自分は学生時代にはそう解釈していました) もし自分が誰かに腕を掴まれたのなら、 もっと大きな力を出せればそれを振り払うことをする様に 加えられた力には一定の抵抗が生まれるはずで、 痛くないように打鍼する技術は教わりながら 学生時代に感じていた違和感は、 ニュアンスがこれに近いのかも知れない。 でも実際は治療を受けているからだのうえに起こるのは、 ほんの些細な“刺激“でそれまで経験しない、想定していない反応が始まる。 ぜんぶ内側で起こっていて、自分の一番静かなところ から大胆に動かされる様な感覚。 定期的に治療を受けていても、 今日どんなふうに展開するのか分からない(のでドキドキする) (疑問も募る。これだけのエネルギーは普段いつどこで発露しているのか) ツボの存在について、ひとつ新しい気持ちで検討できそうな気がします。

胃の冷えと肝経

太衝穴を調べていると、瀉法に灸を配すと暖肝散寒理気の効能を持つとの事です。 その効能は湯液における呉茱萸、橘核、茘枝核、小茴香などの効に類似 <治療範囲> 3.肝経経脈上の病変 太衝は、厥陰肝経の経脈、経別の循行路線上で肝と関係する膝、大腿、陰器、小腹、少腹、上腹、膈、乳、脇肋、眼目、巓頂、喉、口唇などの部位を治療することができる。   との事です。 ここで巓頂とあったので、呉茱萸で治せる厥陰頭痛にも使えるのだろうなと思いました。 厥陰頭痛は頭頂部に起こる痛みとされます。   なぜ起こるか調べていくと、 中医病因病機学 P304 「虚寒とは、中焦が虚寒で土が木を養えなかったり、命門の火が衰えたために肝の温煦作用が失調したりして、肝陽不足・陰寒内生という病理に陥ったものである。臨床症状としては、足腰がだるく力が入らない・異常に疲れる・憂鬱感・びくびくする・涎を嘔吐する・頭頂部痛などがある」 という事なのですが、慢性病の事しか言っていないのであまりしっくり来ませんでした。 確かにその様な時もあるのでしょうが、自分の体の経験から急性病のパターンもあると思います。   高校時代、かき氷を一気にかき込んで頻繁に頭頂部に痛みを走らせていましたし、 大学時代に奈良の極寒の中コンビニでキンキンのビールを飲んだ時も頭頂部に鋭い痛みが走っていました。 どちらのパターンでもその後、しばらくは薄い大量の唾液が出る状態でした。   肝経の走行経路を見ていくと、 臓腑経絡学 P255 「挟胃屬肝絡膽:胃の腑を前と後ろから挟むように、または囲むように流注している。」 例えば、胃を強烈に冷やし、寒邪が居座る事で側を通る肝経に影響をしているなら この場合は 胃=本、肝=標 になるのではないかと思います。   そうなると一生懸命に太衝や太敦を治療しても枝葉の治療に過ぎず、 根本の胃を治さなければ治らないのではないかと思います。   胃を治す治療としては、よく中脘に灸をする様です。 大学時代の胃を痛めたパターンの時ですが、帰宅後に猫がお腹の上に乗ってきたのでそのままにしておくととても楽になりました。 思い返すとあれは中脘あたりだったので、手元に灸が無くても何とかなるのでは?と思いました。   参考資料 中医鍼灸臨床経穴学 東洋学術出版社 穴性学ハンドブック たにぐち書店 中医病因病機学 東洋学術出版社 臓腑経絡学 アルテミシア 中国傷寒論解説 東洋学術出版社

風寒邪の咳嗽から穴性を学ぶ④

前回の続きです。 中医鍼灸 臨床経穴学 P25 「風寒外束、肺失宣降(風寒の邪による宣降失調) 症状:喉が痒い、咳嗽、痰は稀薄である。鼻閉、鼻水。声が重い。または発熱、悪寒、頭痛。無汗。舌苔薄白、脈浮など。 処方:中府、風門、大椎(瀉)…疏風散寒、宣肺止咳。」 残りは風門・大椎の意味を考えてみます。 この組み合わせは風寒外束時によくセットで使われている様です。 差別化してみると、 同書籍 P335 「効能鑑別 風門、大椎、列欠、外関、合谷 この5穴には、ともに解表の効があるが、格穴それぞれに固有の特徴がある。 ①風門:去風疏衛解表、宣肺の効がある ②大椎:宣陽退熱解表、項背部の表邪を解表する効がある ③列欠:疏衛解表、宣肺、止咳、平喘の効がある ④外関:清熱解表、上焦の熱を清熱する効がある ⑤合谷:去風疏衛、清熱解表、宣肺、清肺の効がある」   穴性学ハンドブック 風門は風類腧穴に分類され、効能では瀉で疏衛宣肺(+灸で祛風散寒) 大椎は寒類腧穴に分類され、効能では瀉で宣陽解表(+灸or焼山火or吸角で解表散寒)   →ともに解表作用ではありますが、風門は去風、大椎は散寒解表に重きを置いている印象を受けました。もう少し掘り下げてみます。   中医鍼灸学の治法と処方 P259 宣肺止咳法「風門:風門は熱府といい、足太陽膀胱経と督脈の会であり、風寒邪が侵入する門戸である。同穴と大椎を合用すると、疏風散寒・発汗解表が可能となる。」 →逆に言えば、風門は大椎と合わせないと疏風散寒・発汗解表が可能でない状態なのだと思いました。   一方、大椎から考えてみると、 中医鍼灸臨床経穴学 P751 「列欠(瀉)を配穴すると、発汗解表、宣肺平喘の作用が生じる。同作用は湯液における麻黄湯(「傷寒論」方)の効に類似している。」 →つまり風門の代用が列欠でも務まるのだと感じました。   もう一度P 25に戻ると ①風門:去風疏衛解表、宣肺の効がある ②大椎:宣陽退熱解表、項背部の表邪を解表する効がある ③列欠:疏衛解表、宣肺、止咳、平喘の効がある ④外関:清熱解表、上焦の熱を清熱する効がある ⑤合谷:去風疏衛、清熱解表、宣肺、清肺の効がある   →つまり大椎+疏衛解表、宣肺の作用があれば、大椎+風門と同じことが再現できるのではないか?と思いました。   大椎はこう言った状況で変えの効かないものなのか、 また探してみて見つかればなと思います。   参考文献: 中医鍼灸臨床経穴学 東洋学術出版社 穴性学ハンドブック たにぐち書店 P131、182 中医鍼灸学の治法と処方 東洋学術出版社

気が昇る

こんにちは高山将一です! 最近の人には気が過度に昇ってしまう人が多いような気がします。 よく怒ったり、イライラしたり、カーッとなる人が多いような感じがします。 そうすると身体が熱くなり、顔が真っ赤になる傾向がある、特に上半身にかけて。あまり下半身が熱くなるって言うイメージはありません。 なぜすぐに気が昇ってしまうのでしょうか? それは気をあるべき場所に留めておくことができなるからではないかと思います。 気をしっかりと留めておくことができればすぐにカーッとなったり怒ったりしてしまうことが少なくなるのではないかと思います。 気をしっかりと留めておくにはどうすればいいのでしょうか? やはりこれも臓腑が関係してくるのでしょうか? イメージ的には腎か肝か心の作用が関わってくるような気がします。 腎は気を留める、肝は気のバランスを整える、心は精神を整える。 この3つの失調が入り組んで気の過度な上昇を導いているような気がします。 ps写真は、太陽が東から昇ってまいりました!

閃めく経絡

以前から気になっていた本を読んでます。図書館で借りれました。 「閃めく経絡」ダニエル・キーオン著 私は今まで東洋医学について記した本で、西洋人が書いた本を読んだことがありませんでした。振り返れば、ほぼ日本人か中国人で、韓国人は1人か2人くらいでしょうか。なのでとても珍しく感じました。ちなみにこの本はアマゾンでも好評価です。 著者はどんな人なのかと見てみたところ、救急診療専門医のイギリス人で、中国に留学して鍼灸を学ばれていたようです。 なので、もともと現代医学に明るく、特に発生学が得意なのか、その知識の上で鍼灸を学ばれて感じたことを掘り下げ、分析して想像した内容になっているのかなぁという印象を受けました。 著者は、「発生学からの知識に数学を取り入れて、鍼灸がどのように作用するか理解するようになる方程式を作り上げる。それは無限に複雑で美しい形であると同時に洗練された単純性を表したものになる。」ということを記しています。 今まで東洋的な言い回しに慣れてきた私には、いかにも西洋的な文面だなと感じざるおえませんが、このような考え方で西洋医学はここまで発展してきたのだろうとも思います。 まだ、この本を半分くらいしか読んでいませんが、著者は「気」とは何か、なぜ「経絡」がこのような配置になっているのかを、人体がどのように発生し、どのように作用しているのかを理解すれば明らかになると考え、発生学の見地から答えを見出そうとしています。 この後の展開が楽しみです。   近年、西洋圏でも東洋医学が盛んに学ばれ、人気があると聞いています。そうなることで、この著者のような人も増えてきて、今までになかったいろんな切り口で考えられるようになり、東洋医学もより発展していくかもしれません。そしてそうなればいいなとも思います。

呼吸について

呼吸について勉強しました。
テントで

硬さ 柔らかさ

診察で 各所の情報が、そもそも検討するのに足る量を拾うことができていない 尺度がない その中で観察した情報をすぐに解釈しようとして、できない(できるはずがない) 切診において相手のからだのいづれか部位に接している時に 触れているその部分だけを見て 情報を取りにいく意識が自分の体も思考も硬くしていることに 先輩のされる様子を見て気付かされる 鍼治療を受ける中で気付かされた 自分が力んでいたことを本当に知るのは体の力が抜けたときだった 能動的に取り組むことと硬さはイコールでないのに そうさせているものは何か (覚え書きとして)